第4話 はじまりのとびら 完結
サクラ祭り当日僕らはフェランに戻った。ルチェの店に立ち寄った。「ルチェ、頼んでいたものはできたかい。」「あー、つつじ、間違いなくできてるよ。ところでバルミ師匠は元気だったかい。」「あー、いつも通りだ。それにほら、いつものヘンテコな顔の木の人形。くれたよ。」つつじは、ひもの部分に指を入れくるくる回しながらルチェに見せた。「バルミ師匠、相変わらず絵のセンスはないな。だが、いつも通りのかなりの魔力だ。つつじ、ちゃんと首に付けとけよ。」「分かってるさ。」つつじは、ひものついた木の人形をネックレスのように首につけた。さつきは、その木の人形が何なのか聞きたかったがやめた。『ただの人間の私にも伝わってくる、すごい力を。』「ねえ、みんなお腹すかない?」ビータも「蜜食べたーい。つつじ、お祭りで屋台もう出てるかも」「そうだな。行くか。じゃルチェ、Thanks you またあとで。」屋台はもう出ていた。「その前に一仕事。」そう言ってつつじは魔法の粉をひとつかみ。人差しから巨大な光を出した。光は街中にキラキラと輝く美しい放射線を描き覆った。そのまばゆい魔法の光はサクラ公爵の屋敷にも届いた。公爵家の窓から冷たく赤く光る二つの目がこちらを見ている。その遠い視線をかき消すように街中、あちらこちらで「つつじ公爵だ。」「ありがとうございます。」人々の声。つつじの魔法の輝く光は氷の結晶となり、各店の軒下に素晴らし氷の彫刻を造っていった。人々は「さすがつつじ公爵。」「氷の彫刻もすばらし。」「ありがとう。」言葉があふれていた。そして”ズキーン”つつじの脳内に兄、サクラ公爵からの言葉が飛び込んできた。『つつじ、久しぶりだな。生きていたのか。人間界で死んでしまったかと思っていたよ。また、僕の邪魔をするのか。嫌な弟だ。』つつじの脳内でサクラ公爵に『兄さん。僕は兄さんを救うための戻りました。兄さんは、あのチェリーにだまされているんですよ。やさしい兄さんに戻ってください。』チェリーが割り込んできた。『つつじ君、君は何を言っているのかしら。お兄様を困らせてはいけませんよ。』さつきは、突然止まって険しい顔になった、つつじが気になった。そしてつつじに触れようとした時、ビータが「さつき、今脳内で、
つつじはサクラ公爵とチェリーと話している。触らず、待つんだ。」「サクラ公爵と?」「たぶん、さっきの莫大な魔法の光で、つつじが帰還したことを気づいたんだろう。」「そうなんだ。」さつきは見守り待った。つつじは、まだ動かず立ったまま。つつじの顔は更に険しくなり『チェリー、君が邪魔の魂で兄、サクラ公爵を操っているのは分かっている。もうすぐだ。僕は君を倒しに行く。』『生意気な弟ね。』『・・・・』三人の脳内会話は終わったようだ。「ビータ、さつきを頼む。」「つつじ。」「僕はこのままサクラ公爵とチェリー、チェリーを倒す。」そう言うとつつじは空間移動で消えた。さつきは「ビータ、つつじを追って。すぐ追って。」「ビータもあわてた。」「ビータ、あなたも精霊でしょう。魔法の風、使えないの。」ビータは「さつき、せかすなよ。もちろん使える。行くよ。魔法の風、発動。風に乗りつつじを追いかけた。つつじは、赤い目のサクラ公爵家、チェリーと中庭で、すでに戦っていた。「兄さん、目を覚ましてください。チェリーに操られています。前のやさしい兄さんに戻ってください。」「つつじ、何を言っているんだ。チェリーは、すばらし。彼女の能力は高い。僕には彼女が必要だ。サクラの僕よりも華やかで人を惹きつけるかぐわしい香り。存在自体が素晴らし。彼女の言うことに間違いはない。つつじ、彼女が人間だから排除しようとしているのか?」チェリーが人間。邪悪な心?何かが変だ。僕は兄、サクラ公爵にチェリーの邪悪の魂が入り込んでいたと思っていたが、違う。これは違う。そこへ、さつきがビータと到着。と同時につつじの木の人形が光った。「つつじ、あなたのお兄様はチェリーに操られているんじゃないわ。単なる恋。チェリーのことが好きすぎて言うことを聞いている感じ。悪いけどたん単なる”ばか男”。」さつきが言った。つつじは、「えっ?恋?兄さん、そうなのか?」「つつじ、その女の子が言う通り、僕はチェリーが好きすぎて、つい、言うことを聞いてしまう。」「兄さん、それはだめだよ。」「そうさ、分かっているさ。それにチェリー。」「えっ、弟の僕に。どうして?」「僕があまりにもつつじに甘いし、仲の良い兄弟だから、チェリーがやきもちを焼いた。僕を一人締めしたく、靴を隠したりしたようだ。」「そうか。」「チェリー。」サクラ公爵が呼ぶとチェリーが申し訳なさそうに「ごめんなさい。つい、私もサクラ公爵のことが好きすぎて。」二人の目はグリンに変わっていた。さつきが驚いた顔で「桜子?同じクラスの桜子でしょう。」「えっ、さつき?転校してきたばかりのさつき。どうしてフェランに。ここは精霊界よ。さつきは人間でしょう。」「桜子、あなたも人間でしょう。」「そうよ。私は、サクラ公爵が人間界の桜の季節に毎年来ていて、小さい頃から出会ってたの。それで、ほらこの桜のペンダント。これがフェランに行き来できるカギ。さつきは持ってる?」「へえー、そうなの。いいえ、持ってないわ。それに私は、つつじと今日あったばっかり。今日、雨だったでしょう。それで雨宿り。塾もサボって、つつじ神社で携帯ゲームしてたらそこで、偶然ばったり出会ってしまった感じ。」「へえー、でもあなたたち、とても気が合ってるようね。」「えっ、そう見える?」サクラ公爵も「そうだな。人見知りのつつじにしてみればめずらしいね。」つつじが真面目な顔で「そうなんだ。今日が初めてだと思えなくて。前にどこかで、さつきには会った気がする。人間界が長すぎてフェラン精霊の力が弱くなっているようだ。」サクラ公爵が「僕のせいか。」「あー、でも違う。何かが引っかかって思い出せないんだ。さつきは僕とどこかで会ったことないかな?」さつきは、「ないよ。」とあっさり答えた。つつじの木の人形がまた光だし。「私をたすけて。」微かに声がした。そして消えたと同時に、さつきがふらついた。とっさにつつじは腕をまわし、さつきを抱きかかえた。
「大丈夫か。」「私は大丈夫。ありがとう。」はじまりのとき。
地味なつつじ異世界へ行く 京極 道真 @mmmmm11111
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