優しいお話

ゆかこ

わたしは、やさしい。

基本的に私は優しいし、逞しい。ポジティブだね、とよく言われる。


例えば、小学校6年生の委員会決めの時。

小学生最後の委員会、卒業アルバムに写真も載るので、せっかくなら生徒会に入りたいと思っていた。なんだかんだ、小学生の頃は頭がよかったので、出来るだろうと漠然と思っていた。


私は結局、給食委員になった。


生徒会に立候補もしたけど、他にやりたいと言っている子がいて、その子は毎年生徒会に入っていた子だったからだ。

その子が手を挙げた瞬間、私は手を下げて「私はどの委員会でもいいから」と言い、余っていた給食委員会に入ることになった。

心配してくれた友人には、「私、ごはん食べるの好きだから、大丈夫!」と笑顔で言った。



例えば、高校3年生の頃の合唱祭。

ソプラノのメンバーがあと一人足りなくて、やりたくて立候補した。

中高一貫校に通っていて、5年間ずっとソプラノをやっていた、という自負の念があったのも立候補の理由の一つだ。でも立候補したのは私だけじゃなくて、もう一人いて。私と、その子で実際に一フレーズ歌って、先生に聞いてもらった。どっちがソプラノのメンバーになるか、先生が決めるという話になったからだ。


私は選ばれなかった。


選ばれなかった後、どのチームに行けばいいか先生に相談したとき、先生の手元にある、各チームのメンバー表が目に入った。アルトのメンバーが一番足りていないのを見て、アルトに入ります、と言った。

友人には、「1年・2年とずっとソプラノだったから、最後にアルトもできて、いい経験になるよ。」と笑顔で笑い話にした。



例えば、大学生の頃のサークル。

新入生で音楽サークルに入った。どの楽器のチームか選ぶ段階で、サークルの新入生全員で第一から第三希望を出し合って、チーム決めをした。第一希望のチームは1人人数があぶれてしまったので、辞退した。第二希望のチームは私がメンバーになって人数がちょうどよかったので、そのまま決まる方針になっていた。


結局私は、第三希望のチームに入った。


第二希望のチームで始めは所属できそうになっていたが、途中で他に第一希望のチームに入れなくて、ここ(私が第二希望にしていたチーム)に行きたい、と言っている子が来たからだ。

その途中から来た子は、他にも人数が余っているチームがあったけれど、あのチームには苦手な子がいるんだ、と泣きながら言っていた。気づけば私は先輩に、「私、あの余っているチームに移動するので、この子と変わります」と笑顔で言っていた。

先輩からはいいの?と聞かれたが、「この子はそのチーム希望してないみたいなので。私は第三希望で書いているので、行きます。大丈夫です。あのチームもいいな、と思ってるんです。」とこれも笑顔で答えていた。




本当は。

本当はどれも嫌だった。

どれも最後に笑いながら答えた時、泣きそうだった。

家族に、今日こんなことがあったんだよと笑って話している時も、ずっと泣きそうだった。


小学生の頃の卒業アルバムを見ると、今でも給食委員になりたくなかったんだよなと思い出す。

高校生の頃の合唱祭の思い出も、思い出すと「私は選ばれないんだ」、という気持ちになる。

最額のサークルでの出来事も、卒業した今でも「やっぱりあのチームが良かったな」と思い続けている。


後悔しているなら、実際に行動に移してみればいい。そう思ったこともある。

例えば恋愛。例えば仕事。


どれも、結局うまくいかなかった。

私は選ばれなかったし、いくら頑張っても結果が出ないので、評価もされなかった。上司に言われ、なかなか家に帰れない日もあった。

どれも、その時の環境の周囲の人に、大丈夫?と聞かれるたび、笑顔で「大丈夫!」「大丈夫です!」と答え、やり過ごしていた。



素直に答えればいいのに、何故そう答えるかって?


だって、そう答えないとあなた困るでしょ?


そういう、思い通りになる人が、一人くらいいないと困るでしょ?

そう顔に書いてるもん。


小学校の頃の先生、高校の頃の先生とクラスメイト、友人たち、大学の頃の先輩と同期、好きになった人、会社の上司と同期。それに家族。


みんな。みんなそう。


それに困るっていうのは、嫌いにもつながる。

私は、臆病だから。嫌われたくない。困らせたくない。


そして再チャレンジしてもダメだと、存外響くもので。

物語の主人公でもモブAでもない私は、もう一回!と立ち上がることはできなかった。





でも、ほんとは私の話も聞き入れて欲しい。希望が通って欲しい。

叫びたい事だって、いっぱいある。


そう思うのは、駄目だろうか。

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優しいお話 ゆかこ @yuukororinn1227

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