第2話 過程の1ページ

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 目を開けると僕の目に知らない景色が飛び込んできた。

 ボロボロの天井は所々のコンクリートが剥がれ骨組みが見え、おまけに蛍光灯は割れてしまっている。


「お、目が覚めたみたいだね」


 そう話しかけてきたのは顔に大きな傷があるお兄さんだった。


「名前、聞いてもいいかな?

あとココア飲む?、落ち着くよ」


 お兄さんは飲み物を入れながらそう微笑んで続けた、でも僕はすぐに喋ることが出来なかった。

別に喋り方を忘れたとか、名前を覚えてないとかじゃない。ただ ”それ以外を全く思い出せない”

僕が言葉に詰まっているとお兄さんはいつの間にか優しく僕のことを抱きしめていた。なんで急に自分が抱きしめられているのか分からなかった、でもお兄さんの体はとても温かかった―

しばらくして自分が泣いていたことに気づけないほど動揺していたことに気づいた、と同時にお兄さんがなんであんなことをしたのかも分かった。

とても優しい人だと思った、せっかく止まった涙がまた溢れそうになるくらいに、、

落ち着いたあとでお兄さんに自分の名前が”テスラ=オラクル”であることと名前以外覚えてないことを伝えた。

それを聞いたお兄さんは―


「しっかり喋れて、ココアも飲めてたし言葉とある程度の常識は覚えたままみたいでよかったよ」


結構冷静だった、、

そしてお兄さんは色々なことを教えてくれた。

自分自身がアンドロイドであること、僕のようなニンゲンが珍しいということ、この街で僕が一人でいるには危険なところだということを

でもまだ、大事なことを聞けてない


「お兄さん、お兄さんの名前はなんていうんですか?」


お兄さんは目を点にしたまま固まっている


「ごめん、ごめん

テスラ君に名前聞いておいて自分の紹介をしていなかったね」


とバツの悪そうな顔をしながら話し始めた

本気で自己紹介を忘れていたらしい、お兄さんは意外と抜けているのかもしれない。


「俺の名前はキース、家名は忘れちゃったんだ」


記憶のない僕ですら名前は覚えてるのに、お兄さんってやっぱり抜けてるとこあるのかな?


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Puan Kiece ラムにく @Ramu29

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