祝砲

誰がみてきたんだろうか。自分の努力を。

毎日資料を見漁ったことも、絵具を混ぜてはカンヴァスに乗せ続けてきたことも、

鉛筆を削るその手に自信が持てないままデッサンを描き上げてきたことも、

粘土を捏ねては伝わると信じて形作ってきたことも。


誰が見てきたんだろうか。自分の苦悩を。

講師はわかってくれなかった。友人の方がうまく思えた。

あいつの方が努力してるのだろうか。

自分のこの作品たちは駄作なのだろうか。

試験結果の開示はどれもよくないものばかり。


誰がわかってくれるのだろか。


誰もわかってくれなくてもいいのだ。

今まで費やした時間は自分の糧となる。熟してきた経験は自分の色になる。

自信がない時期は自分を愛する機会になる。


誰にもみられてなくてもいいのだ。

いつだって自分の作品を見てるのは自分だ。

一番努力してることを知ってるのは自分だ。

作品が宝石のように愛おしいことを知ってるのは自分だ。

何度も涙したことを知ってるのも自分だ。

試験結果なぞ、たまたまその時の運なのだ。


自分がわかってればいいのだ。

誰よりも、ずっと自分が自分を知ってるのだから。


ほら、認めてもらえたじゃないか。報われたじゃないか。

目一杯自分へお祝いしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る