第9話★あらためてよろしく
その日の夜はココネとシェラが狩ってきた魔物の肉で村をあげての歓迎会が催された。
村人は150人ほどであるがそのすべての胃袋を満たすために、ココネはまたシェラと共に狩に行き、追加でオークを3体、ジャイアントボアとワイルドボアを2体ずつ仕留めてきた。
解体は村で狩猟を担っている男衆で分担し、女衆は共同竃に火を入れたり、家の竈でパンや肉、野菜などをこれでもかと焼き続けた。
途中、漣が共同竃が老朽化しているのに気づき、ついでにと3台同じものを土魔法で作り上げた。
これには女衆から盛大に感謝され、早速竃が役に立つことになる。
その間にココネと漣は自分の土地に家を建てる事にした。
横長の土地の半分を店舗兼住居に。
1階は店舗と倉庫、そして保存庫とダイニングスペースと水回り。
地下を二層にして上が保存庫と倉庫。下が作業スペース。
2階が6畳ほどの部屋が三つ。
ココネと漣で1部屋ずつとして残りは客間。
狭いながらも畑も作る。
庭を4つに区切り、十字の小道を作る。
「という感じで土台と建物を作るけれど何か希望ある?」
「特には。内装は私が過去に与えられた家の調度品もありますし、足りなければ作ればいいですしね」
「そうだね。僕も父上と一緒に行商人から買ったものもあるし、それで。じゃぁいくよー」
と、漣は腕を一振りした。
すると土魔法でまず家部分の線の通りに土が深く削られ、そして硬化コーティングをしていく。
その上でココネが伐採してきた樹を用途ごとに風魔法で切断、適度に乾かしてこちらにも硬化を施し、防腐と防火を付与した物を組み立てていった。
あっという間に地下2階、地上2階の店舗兼住居が出来上がった。
「さて、次は内装か……」
「早く行きましょう。漣君!」
「わかったよ、ココネ」
ワクワクが止まらないココネに腕を引かれ、漣は苦笑しながら家の中へ入っていった。
「店舗の方はあとでいいけれど、先ずは生活環境を整えるか」
「ですね、自分の部屋は後でじっくりやりますので、共有スペースは二人でやっちゃいましょう!」
「うん!」
先ずはダイニング。
キッチンは魔導コンロや魔導冷蔵庫、冷凍庫を完備し、横の扉は食材保管庫となる。
水は外に作った貯水タンク内にはめ込んだ水魔石により精製される。これはお風呂やトイレにも共有される。
キッチン込みで10畳ほどのスペースだが、イスとテーブルを設置してから居間となるスペースにカーペットを敷き、その上に小さめのローテーブルとクッションを置く。
キッチン内に食器棚、居間には小さめの本棚を用意した。
店舗以外の家屋内は土足禁止にしたのでキッチンへの上り口に玄関マットを敷いてスリッパも用意。
キッチンから奥に行くと風呂場とトイレ。
風呂場は昔よく見たタイル張りにし、ミニ銭湯の様な仕上がりにした。
火魔石と浄化魔石を使用しているのでいつでも沸かしたてを堪能できる。
トイレは水洗にして、すべての排水は地下にある浄化槽に行くようにし、そこにいる数匹のスライムで分解をお願いした。
野菜くずや排せつなので得た栄養はそのまま肥料として生成してもらうようにしたのでこれで畑も安泰だろう。
現代日本の様な便利さはないが、この世界では快適すぎる家になったと思う。
各部屋はとりあえず絨毯とベッドだけ設置して、二人は村の中心まで行くことにした。
「漣様、ココネ様!こちらですよ」
二人の姿を見つけたシェラは大きく腕を振って二人を呼んだ。
各家庭からテーブルを持ってきたようで、中心には色々な料理が乗っていた。
「では、新たに村に迎えた二人……漣君とココネ君の歓迎会を始める!」
クシャートが酒の入った杯を掲げ、一気に煽ったのを合図として、村人は大いに楽しんだ。
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