第8話★いろいろじゅんびするよ!


 ココネに引いてもらった線を見ながら、漣は頭の中でどのような家にするか考えた。

 森を背に横に広い土地なので、半分を店舗兼住居に、半分は薬草などの畑にするつもりでいる。

 ココネが言う通り、時期を見て畑を拡張し、温室を作ってもいいだろう。

 魔法鞄マジックバッグからクリップボードを取り出して完成イメージ図を描いていく。

 ある程度描き込めたらあとは材料さえあればなんとでもなるのだ。


「村長、この土地の購入価格はこれくらいで大丈夫ですか?」


 ジャラリ、と金貨30枚が入った小袋を渡すと、突然の大金にクシャートは慌てだした。


「多すぎるんですけど?!」

「後ほど畑を拡張するのでその分と、余った分は村のために使ってください」

「は、はぁ⋯⋯。この倍くらいの拡張なら⋯⋯。隣の家まで距離はあるので」

「あと、森での自然享受権と伐採権、魔物を倒して得たレアドロの権利はどうなってますか?」

「森での採取は根こそぎで無ければ大丈夫だ。伐採も行き過ぎた間伐でなければいいとは国から言われているし。レアドロに関しては倒した者やその時居たもので話し合って決めてくれ。あとはたまにでいいから、村に卸して貰えると助かる」

「了解です。まぁ活動は森の奥になるので、住民とは範囲は被らないかと。素材関連は加工したのも含めて村に委託するので、街で売ってきてください。売上の3割を村に手数料として収めます」


 漣の言葉に、クシャートは頷いた。


「それはありがたいのだが、いいのか?自分で街に行って売ったりは?」


 クシャートの言葉に、漣はちょっとだけ遠い目をした。


「僕、人が多いところ苦手なんですよ。それに、女子供なので見た目でボッタクられるのも面倒だし⋯⋯」

「そうか⋯⋯」

「ぼったくった相手にココネが鉄拳制裁加えそうだし、シェラもついてきたらココネに賛同するだろうし、絶対警備兵のお世話になる未来しか見えないんですよ」

「⋯⋯」


 そんなことは⋯⋯とは言えないクシャートであった。

 シェラが強いのは解っているが、そのシェラと共に迷いなく森の奥に向かっていったココネ。

 漣がどの程度強いのかは解らないが、守られるだけの少年では無いことくらい、クシャートは肌で理解している。

 クシャートもまた、この村を興す前は戦いに身を投じて居たのだから。


「漣君、ただいま戻りました!」

「漣様、パパ!ただいま!」

「おかえり、ココネ、シェラ」

「怪我はないか?シェラ、ココネさん」

「大丈夫です!漣君、沢山資材ゲットしてきたので、魔法鞄マジックバッグの共有フォルダに入れときました!」

「ありがとう、ココネ」

「パパ!ココネ様と一緒に大物狩ってきたんですよ!解体済みなので今夜は村中で漣様とココネ様の歓迎パーティーしませんか!」

「あ、ああ⋯⋯」


 倒れる前よりも更にパワーアップした娘をみて、父親は無力なんだな、と黄昏たクシャートであった。

 二人が狩ってきたのはジャイアントグリズリー、ジャイアントボア、ジャイアントディアーなどの動物系で、さらには自生していたハーブや果物も採って来たという。


 クシャートはただ、笑って頷くだけである。



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