第7話★ここにすむよ
シェラがこの地上に残り、村や漣とココネの為に頑張る事を決意したので、二人はまずこの村をシェラの案内で見回ることになった。
目覚めたシェラに声を掛けるものは多く、それだけシェラがこの村にとって大事な娘であることが見て取れる。
その都度二人を紹介し、日が傾くころには村人全員に知れ渡る事になった。
「お二人はこれからどうなさるおつもりでしょうか?旅を続けるのであれば物資はご協力させてください」
夕食後、クシャートはそう漣とココネに問いかけた。
この質問は娘であるシェラにとっても重要な事なのだから。
「そうですね。僕はこのらへんの事は知らないのでそれを学ぶために暫くは滞在したいんですが、どこか空き家があれば買い取らせてほしいです」
「そこで薬や生活雑貨なども販売したいですね、漣君」
「そうだね、お店屋さんしたいね」
二人の言葉に、クシャートは「お店屋さん……」とつぶやき、考え込んだ。
「ここは150人ほどの小さな村ですので薬や生活雑貨を扱って下さるのならありがたいですが、空き家は軒並み古くて修復するより立て直した方が早いものばかりですな」
「ああ、土地だけあればいいんです。適当に建てますんで」
「適当に……建てる……?」
「建築資材は森の木を切っても大丈夫ですか?奥の方から取りに行きますんで」
「あ、はい……。……建てる??」
「パパ。お二人に任せておけば大丈夫ですよ」
「……うん……」
ちなみに夕飯はシェラと漣が全部準備した。
メイドであるココネは食器などを
聞けば「料理は漣君担当なので」とにこにこ顔で言われ、クシャートは何も言えることはなかった。
綺麗な白磁の陶器を使った皿に銀のカトラリー。テーブルには金糸で刺繍されたクロスが張られている。
この刺繍をしたのも漣で、家で時間つぶしに色々なものを作っていたようだった。
夕飯の内容は新鮮なサラダ、コーンスープ、ロックバードのソテー、柔らかなパン、食後は蜂蜜の入った紅茶に焼き菓子というラインナップで、クシャートはただ驚くだけだった。
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「ここらの一帯を使いたいんですがだ丈夫ですか?」
翌朝、クシャートと共に家の候補地を探しに村の中を歩いた。
その時に、漣が指し示したのは森を背にした場所で、ココネがガリガリと横長の四角を地面に引いていく。
「この位ですかね、漣君」
「そうだね。それなら店舗兼住居と栽培できる庭も作れそう」
「あとは追々森側に温室作ればいいですしね」
「そうだね」
「パパ、どう?」
たしかに、村の事に関しての裁量は村長であるクシャートにある。
だが、家を建てるのであればそれなりの準備もあるのでは?とは思ったが、シェラが大丈夫だというのなら大丈夫なんだろうな、と諦観しつつ、OKを出した。
「では私は資材を確保してまいります」
「私も行きますね。狩りをして皆に食料を配りたいのです」
「解りました。では共に参りましょう」
「はい!」
ココネとシェラは「いってきます!」という言葉の後、電光石火の勢いで森の中に走り去っていった。
倒れる前よりも元気な気がする……。
クシャートはそう感じずにはいられなかった。
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