第10話★かいてんじゅんび
歓迎の宴から1週間。
漣とココネはお店の準備に取り掛かった。
クシャートには行商人ではあるが錬金術も嗜んでいるので、お手頃価格の薬や農薬等も取り扱う事が出来る、と言ったところ大歓迎されのだった。
それからこの村で不足している生活必需品、薬や農具等を相談し、ある程度であれば
ただし、この村では現金での取引がたまに街道を通る行商人としかなく、ほぼ物々交換という前提としてくれ、と頭を下げられたのでそれで問題はない、と手を打った。
それに、村の子供たちや狩、伐採するついでに薬草を納品してくれればそれに見合った物と交換すると約束した。
「それに、何か物入りであれば私が二つ先の街や王都に【転移】して仕入れてもいい訳ですし」
「そういえばココネは世界各地まわってたんだよね。その時に転移ピンさしたの?」
「ええ、街中でやると不法侵入になりますので、門から死角になる場所か手前の森なんかで登録してますね。一応全国でおよぞ50か所……各国8か所ずつくらいですかね。主要都市にはピンさしてます」
「そりゃあ便利すぎて、父上が【転移】なしで。っていうね」
「そうですね。私も何だかんだ現役時代は重宝しすぎて、小さな町とか知らないままですしねぇ」
漣はココネとシェラが間伐しつつ採取で採ってきてくれた薬草で作った低級ポーションを棚に並べながら、そう話す。
【転移】で各地を回っても、それは経験不足になるだろう、と。
「この低級ポーション、追加効果ありますね?」
「うんそう。傷薬程度だけれどさ、初期の風邪や発熱のだるさ、のどの痛み、関節の痛みなんかにも効くように調合変えてみたんだ」
「へぇ。あの薬草でですか?」
「うん、【緑草】【赤草】【青草】【黄色草】【紫草】【白草】【虹草】が全部まかなえる森って貴重だよね」
「たしかに。でも【緑草】【赤草】【青草】以外の【黄色草】【紫草】【白草】【虹草】は珍しい上に専門の薬草採取人ですら知らないですものね」
「なんでだろうね?」
「【緑草】【赤草】【青草】以外は加工するスキルが高い上に、あまり生えてるところが少なく、取引も少ないですからねぇ」
【緑草】【赤草】【青草】【黄色草】【紫草】【白草】【虹草】は薬草の名前で、それ以外に【宝石花】【宝石草】【宝石の実】【神の葉】【神の花】【神の実】があるが、【緑草】【赤草】【青草】以外は滅多に生えておらず、【神の~】に関してはハイエルフの森や一部の聖域でしか生えてこない。
それに、流通量や使用頻度でいえば【緑草】【赤草】【青草】>>>>>【黄色草】>>>【紫草】>>【白草】>>>>>【虹草】という感じだった。
「【緑草】をメインに【赤草】と【青草】を2:0.5:0.5で入れ、【黄色草】【紫草】の粉末を耳かき摺切り一杯程度入れると病気や神経痛に効くんだよ。里で隣の家のキリルクさんが言ってた。飲みやすくするようにジャイアントキラービーの花蜜もポーション10本に対して大匙1杯いれてるよ」
「ふむ。ここにはお年を召した方が多いですからね」
「そういう事。僕らがこの村で色々と経験を積んだり、知識を得るためにはまだまだ長生きしてもらわないとね」
漣は他にも傷薬の軟膏や手指消毒液、リモーネ、ライム、オランジュを塩漬けして出た果汁と蜂蜜で作った熱中症対策用の飴を油紙で包んだものを大きな瓶に入れて行く。
これからの季節は夏。
聞けば真夏に倒れてしまう村人もいるという。
「あとはパン、クッキーなどのお焼き菓子、干し肉などの携帯食、自作の木の食器やカトラリー、手提げ籠なんかかな」
「そうですね、籠関係は寝しなの習作ではありますが、用途は広いので」
「よし、あとは棚の隙間を埋めるためのアイテムをこしらえるかね」
「はい!」
お店の準備は着々と進むのだった。
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