第2話★道は続くよどこまでも

 現在位置と地図を見てきた野村まではおおよそ徒歩で3時間ほどの所にあるようだった。

 名をナザールと言い、150人ほどが集まった村だ。

 幸いにも森から近く、村人は狩猟をメインに薬草などを採取し、それを加工して近隣の村や街と取引をして生計を立てている。

 森も最奥まで入っていかなければ出てくるのは獣やゴブリン、居てフォレストオーク、フォレストウルフで、熟練の村人数人がかりで倒す事が出来る。

 ゴブリンを討伐すれば領主から街道整備費として報奨金がもらえ、オークは肉、ウルフは毛皮等が収入源のようだ。


「のどかでいいねぇ。こういう村でのんびりしたいなぁ」

「そうですね。路銀が尽きそうでしたら私が狩りに出てもいいですし」

「その場合、僕も一緒にいくから連れてってね、ココネ」

「はい、必ず!」


 二人は地図を見ながら、のんびりと歩いていた。

 村までおよそ3時間もあるのだ、色々と取り決めをしていかねばならない事がある。


「路銀っていえば、父上が白金貨3000枚をくれたけれど、これって日本円換算でいくらになるのかな?」

「さぁ……。私勇者時代必要な装備類はお城の兵士のを貰えてましたし、お給料も貰ってないのでなんとも……」

「金の含有率は99%だってさ」

「残りの1%は?」

「魔金っていうのが含まれているみたい。あ、偽造防止用に国指定の刻印魔法が掛かってるんだってさ」


 漣の鑑定眼は通常の説明以外にも、意識すればが詳細項目として表示される。

 その鑑定眼をもってすれば白金貨一枚日本円換算でいくらかも出てくるのだが、いかんせん、漣にはそれを思いつく事が出来なかった。

 ココネも鑑定眼はあるが漣ほど性能が良い訳でもなく、オールラウンダーというスキルの弊害か、ほぼ器用貧乏に成り下がっている。

「私、サマルトリア型なんですよねー」とはココネの言葉だが。

 もし件のゲームを知っていて、ココネの魔王討伐の詳細を知っている人物がいたらこう叫ぶだろう。


 と。


「偽造防止はいいですね。この世界ちゃんと造幣局があるようですし、安心しました」

「あんまり作ると石ころと同じ価値になっちゃうからねぇ」


 見渡す限りの草原のど真ん中に一本だけある道をてくてくと歩いていく。

 途中でここは試される大地なのでは?と漣が思ったとか思わなかったとか。

 現代日本の主要都市から召喚された二人には、何もない一本道は珍しいのであった。


 ちなみにこの世界は通貨は共通で、上から白星金貨、星金貨、白金貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、銅貨、鉄貨、銭貨幣となっており、平民は大銀貨以下、それ以上は商人や貴族が主に使うようで、日本円換算の詳細は以下となる。


 白星金貨:10,000,000円

 星金貨:5,000,000円

 白金貨︰1,000,000円

 大金貨︰100,000円

 金貨︰10,000円

 大銀貨:5,000円

 銀貨︰1,000円

 銅貨︰100円

 鉄貨︰10円

 銭貨︰5円


 つまり、漣とココネが貰った白金貨3000枚は日本円にして30億ほどとなり、白金貨一枚で平民家族6人が一年は飢えず、寒がらず、生活環境を整え、病気になっても薬を買える暮らしが出来る。

 子供が商店の荷運びや薬草採取をして1日で銅貨2~5枚程度、大人であれば雇われで週銀貨5枚ほどだ。

 一家6人が朝から晩まで働いて、週銀貨12~15枚が平均値といえる。


「へー。そうなんですね」

「知らなかったなぁ。ナレの人、説明有難う」


 あっ、はい……。


「とはいえ、30億をポンとくれる父上も大概おかしいんじゃない?」

「そうですね。これはナイナイしときますか?」

「だね。僕らお小遣い貯めていたし。それ使おうか」

「セイラン君、何かっていうと手伝い賃とかお小遣いとか握らせにきますからね」

「魔王や宰相のおじさんたちも何だかんだで節目節目にくれたよね」


 保護者も何気に常識がない、と二人は思うのだった。


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