第6話

「こんにちは」

「ああ圭太。こっちだ、こっちに来なさい」


そこには他の村人の子どもたちも集まっていては駒やかるたで遊んでいて活気づいた声が響き渡っていた。ある子が圭太を呼び手を引いてある場所へ行かせるとそこには腕相撲をしている子たちが賑わいを見せている。


「お前が圭太か」

「そうだよ」

「腕相撲ってやったことあるのか?」

「ないよ。でも面白そうだから僕も一緒にやりたい」

「いいよ。俺が勝ったらみんなとは遊ぶことはやめてくれ。もしお前が勝ったらなんでもいう事を聞いてやる」


そう言った彼は圭太よりも頭一つ分背の高い体格の良い男の子だった。二人は腕を組み合い合図とともに力を入れていくと両者とも一歩とも譲らすに接戦が繰り広げられていき、周りを取りかこむ人たちも声援を送っていた。圭太は雲雀の声援が聞こえてどんどん腕を倒していきやがて彼はその男の子に勝った。


「お前強いな。凄いよ」

「へへっ。また勝負する?」

「もういい。これだけ強いやつに会ったのは初めてだ。よし、約束通り願い事を聞く。何かあるか?」

「僕、みんなと友達になりたい。どうだろう?」

「ああいいさ。なあみんな圭太とこれから仲良くしてやってくれ。いいだろう?」

「良いよ!圭太、今度はかるたをやろう。こっちに来て」


その様子を見ていた雲雀は涙ぐみながら我が子の小さくも勇ましい姿勢に改めて精いっぱい育てていこうと決心した。その夜鱒弥が帰ってきて昼間にあった出来事を話すと彼も喜んでは圭太を抱きかかえてじゃれ合っていた。


翌年になり三人は隣町の初詣に行きその帰り道に雲雀の実家を訪れて、圭太が彼女の両親に会わせると菓子やお茶を差しだしてはお年玉もあげて圭太の嬉しそうな声を聞きながらその成長ぶりに顔がほころんでいた。


やがて春が来て田植えの時期に入ると村人たち数名に声をかけ雲雀や圭太も一緒に田畑へ出向いて皆で苗を植えていった。

圭太は夢中になりながらも懸命に一本ずつ植えていき、途中足が滑って体が中に浸ると笑い出し、それを見た皆も彼の手を引いて笑いあっていた。


二か月ほど経ったある日の晩、三人が眠る枕元に小さな足音が聞こえてきてそれに気づいた圭太が起き上がると一人の女の子が連れていきたい場所があるから一緒に行かないかと言い、圭太は少し迷いながらもその子とともに家を出て、しばらくしてから鱒弥が目を覚まし彼がいないのに気づいて慌てて雲雀をゆすり起こし、田畑へ向かって探しては以前道哉が落ちた井戸にも行き様子を見に行ったがどこにも見当たらなかった。


肩を落としながら家に戻ると明かりがついていたので駆け寄り扉をあけると台所からうなり声が聞こえてきたので行ってみると、体中を水に浸された圭太が溺れるように苦しんでいるのを見つけて、鱒弥は医者を呼び家に来てすぐに彼の体内に含まれている大量の水を口から吐き出すように背中をさすっては口の中に手を入れて吐くように促していった。

しかしその僅か三十分ほどで圭太は静かに息を引き取っていった。


「どうしてこんなことが続くんだ?」

「これで、三人目……私達が何をしたっていうの?」


二人は長年続く不可解な現象に疑心を抱くようになり、圭太の埋葬が終わった後に凪の家へ訪れてなぜ自分たちの子が謎の死を遂げていくのか相談を持ち掛けていった。

凪はその前に雲雀に聞いておきたいことがあると話しかけてきた。


「雲雀。お前さん、どうして年を取らないのか私らに何か隠していることでもあるんじゃないか?」

「お医者様にも何度か診てもらっています。両親にも特別何かを飲ませたりしたのではないかと疑いました。ただそのようなことは全く思い当たらないと言ってきて、原因が不明なんです」

「どこかに行って誰かに何かお告げみたいなことを言われた事はないかい?」

「ないです。もしかして、お二人とも私が何か得体の知れない疫病にでもかかっているんじゃないかって思っているんですか?」

「俺はそう思わない。そんなことなどこの村には言い伝えなど無い。もし仮にあったとしても必ず誰かかしらから話は聞いているさ」

「今後もし何かあった時には鱒弥にすぐ言いなさい。この子はあんたの味方なんだからね」

「わかりました。気をつけます」

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