第21話 愛を交わす
自室に戻ろうとする麗夜に、
「麗夜、水都ですが」
紅が声を顰めた。
「羅の国に探されています。理由はわかりませんけど、かなり必死に探しているようですので、気をつけた方がよろしいかと」
羅の国に探される……麗夜はすっと血の気が引いたのを感じた。
剣闘士としても武将としても優秀だから探されているのかもしれない。しかし、羅の国と言えば「瑠の字を継ぐ娘狩り」。
最近は止んでいるとは言え、麗夜からその記憶を消すことは出来ない。
そんな国に探され、見つけられ、奪われたら……
返事もそこそこに麗夜は瑠優が待つ自室に急ぐ。勢いよく扉を開け、そこに瑠優がいることに安堵する。
「おかえりなさ…」
笑顔で迎え入れる瑠優を強く抱きしめる。
やっと……やっと見つけたんだ。絶対に誰にも渡さない。
「どう……しました?」
瑠優は麗夜を見上げ、心配そうに尋ねた。
その愛らしい唇に麗夜は性急に唇を重ねた。
いつもと違う麗夜の様子に、瑠優は身体を固くするが、長い接吻にやがて力が抜けたように麗夜もたれ掛かかった。
麗夜はそんな瑠優を抱き上げ、寝台に横たわらせると覆い被さるようにして唇を奪った。
髪を撫でながら、唇を重ね、口中を舌でなぞり上げる。瑠優はその突然の侵入に驚いたようだが、次第にそれに応え始める。
貪るような接吻を続けた後、麗夜はようやく唇を離し、瑠優を見つめた。
頬を紅潮させ、呼吸を乱した瑠優はひどく煽情的に見え、麗夜はその欲望をもう、抑えられなかった。
麗夜は唇を瑠優の首筋に這わす。
瑠優が纏っている衣を剥ぎ、露になった肌にまた、唇を落とす。そのまま、唇を舌を、全身に這わせると、今まで堪えていたのだろう、微かな喘ぎが瑠優の口から漏れ出した。
「だめ……そんな……ところ」
湿度を増す、そこに触れた時、瑠優は身体を固くした。しかし、麗夜は止められず自身を受け入れて貰うべく、ゆっくりと解す。
瑠優の肌は薄紅に染まり、その姿に麗夜は更に昂まる。その乱れた呼吸に混ざる声を堪えようと口元に当てた両の手を取り、もう一度唇を重ねる。
次の日に大毅の所へ出発するのだから…とわかってはいたが理性は全く働かない。
その衝動を、もう、止めること出来ない。
「麗夜……」
瑠優が何度も名を呼ぶ、その声には切なさが混じる。麗夜の背中に腕を回し、しがみつくように絶頂を耐える。
「瑠優……愛してる」
その夜、二人の部屋に響いたのは、お互いがお互いの名を呼ぶ熱い声と、愛を交わす言葉。
やっと繋がれたその身体をお互い離すことが出来ず、何度も何度も愛し合った。
翌朝。
瑠優は麗夜の腕の中にいた。
瑠優は薄く目を開け、傍に麗夜がいることに安心する。
私は麗夜の傍にいてはいけない。禍に巻き込む前に、ここを出て行かなくては……瑠優はそう考えていた。
しかし。
麗夜は瑠優を傍に置きたがり、余程のことが無い限りは離れようとはしない。始めの頃こそ、瑠優の不安を癒すためかと思っていたが、そのうち、麗夜は瑠優が自分の傍からいなくなることを恐れているのだと気がついた。
その不安を瑠優は知っていた。真っ暗な中に放り出されるような、世界に自分しかいなくなってしまったかのような……そんな不安。だから……
「いなくならないよ」
子供の頃、麗夜が離れていくことを不安がる瑠優に何度も言ってくれたように、瑠優は呟く。
瑠優は麗夜の髪に触れようと手を伸ばし、でも、しっかりと抱かれて身動きが取れない。起こしてしまうのも忍びなく、下手に動けず……。
麗夜の寝顔を見るのは数年ぶりだ。かろうじて動く右手で麗夜の頬に触れる。
ずっと会いたかった。ずっと傍にいたかった。ずっと前から……好きだった。
「えっ」
頬に触れた瑠優の右手を麗夜は握り、そのまま覆い被さる。
「起きてたの?」
「うん」
麗夜はそのまま唇を落とす。瑠優もそれに応える。長い接吻、強い抱擁。
どれほど続いたか、ゆっくりと抱擁を解き、麗夜は何故か瑠優から目を逸らした。
「悪い……昨日は無理をさせた」
ぽつりと麗夜は言う。
その欲望を抑え切れず、麗夜は何度も瑠優を求めた。瑠優は最後、気を失うように麗夜の腕の中に落ちた。
そんな、昨夜のことを思い出し、瑠優の頬を赤らめる。その様子がまた、麗夜の欲情を誘うが、今日はこれから大毅の城に向かわなければならないことから、麗夜は無理矢理それを抑え込む。
瑠優は首を振り、麗夜の耳元で呟く。
「大丈夫……」
このままでは、止められなくなる。麗夜は立ち上がる。
「麗夜?」
瑠優の声にも振り向かず。
「湯を用意する。今日はこれから大毅の城に向かうから、少しでも身体を休めておいた方がいい」
自分でも「昨夜、あんなことをしておいて」と思わなくも無いが…。
瑠優は麗夜が用意した湯と手拭いで身体を清めてから、身支度を整えていた。
「辛くはないか?」
麗夜の申し訳なさそうな問いに、瑠優は小さく。
「少し…違和感が…でも、大丈夫」
と答えると真っ赤になって俯く。
その様子のあまりの愛らしさに思わず抱きしめたくなるが、それだけで留める自信も無く、なんとか堪えた。
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