赤き果実の禍根 「尋問部隊と透明人間」3



「そうだ。逆にこっちに質問無いですか? 質問攻めにしちゃいましたし、疲れちゃいますよね。私も答えられる範囲で答えますよ」

皆には叱られるかもしれないが。


「質問……?……」

うーん……と唸っている。慎重に何か考えているっぽいと言うとは伝わってくる。


「の、ノーマティ、なのにど、どうしてココに……?」

「どうして?どうしてって……そりゃあ、働いているからですよ」

「えっ、どうして。……え? だって、そんな……」

何をそんなに驚いているのだろう。変なことを言ったつもりは無いが。


「……ココ、何処か分かります? 何をする組織か知っていますか?」

「ら、……ラウラス……」

ちゃんと分かって侵入してきたんだな。


「そうです。世界均衡秘密結社ラウラスです。結社名どうにかなら無いかと思うくらいダサいですよね。でも名前を知っているなら、どんなことをしている組織なのか分かりますよね?」

「でも……」

マジでどうしたんだ。何でまた動揺しだしたんだろう。


「お、おかしい。ありえ、ありえな……だって……っ!」

「だって?」

「ノーマティの敵なのに……!」


??????????

ん?何言っているんだ?

ノーマティの敵?


「あの、どういう話してます? ノーマティの敵?一体なんのこt「騙されているんです! そうじゃなきゃ、そうじゃなきゃおかしいっ!ラウラスは敵!そうでしょ⁉皆そう言ってた。僕も、貴女も被害者で、ぅ……あ……、殺さないと、早く、早く殺して、皆を救わないと!僕が!選ばれた僕が殺らないと!だから、貴女も僕が救うから、場所を教えて!すぐに!」

ガタガタと椅子を揺らし急に暴れだしてしまった。


「んな、落ち着いて。ね?」

暴れるのを抑えつつ、抱き締めながら背中をさする。

これで落ち着くかは分からないけど。


「…………分かりました」

落ち着いてくれた……?それにしても、本当に急に落ち着いたな。テンションの落差激しい人なのか?

「教えてくれないのなら探しに行きます。だから」









どいてください。










そう言うと、彼の体がサーモグラフィー越しに透明になっていく。

それに何だが抱き締めている感覚が薄い?

触っている感覚? 圧? が無くなっていく感覚。

……今、目の前に居るのは誰だっけ? 私、何していたんだっけ?

あれ? これ、ひょっとしなくても今の状況ってヤバいのでは?


「ウサギ‼‼‼」


ウサギの名前を呼ぶと同時くらいに、あっちも何か察したのか、勢い良くドアが開いた。

そして、背中越しではあるが、誰か、多分ウサギだろう。

足音がこっちにやって来る。

すると、目の前のモノの感覚が急に戻ってきた。


そうだった。私は今、侵入者を抱き締めているんだった。



心臓がバクバクしている。

「あっぶねー……」

そう言ったのは私だったか、ウサギだったか。

もしかすると両方か。


彼の素肌が見える。

ウサギの特殊能力によって眠らされたようだった。


その後少しだけ騒動になって、彼は監獄に運ばれたらしい。

尋問部隊の三人は私を感謝してくれていたが、私はウサギとブタには頭を小突かれながら思い切り怒られた。



「……で、最後のアレなんだったの?」

二人に問い掛ける。

二人もあまり分かっていない様だったが、推測では彼の本当の能力は透明人間なんて生易しいモノでは無かったのだろうと言う答えで落ち着いていた。


「つか、手錠も枷もしてるのに普通に能力使えてた時点で、そもそもおかしかったんだよ。アイツ、亜人でもなかったのに」

確かにそれもそうだ。


警察やラウラスの使う拘束具は、拘束後に魔力や能力が使えなくなる貴重な鉱物を配合した特殊加工が施されている。

それが彼には無意味だったのだ。

「とは言え、監獄の方はもっとプロテクトが厳重なハズだから逃亡は無理だろうな。お前に情報を吐いた時点で逃げるつもりはなかったと思うが」

腕を組みながらウサギは言う。


それを聞いたブタは首を横に振った。

「いャ、ドぅだろぉナァ~。サぃごのアれ、ヤばそうダったシなァ。逃げルかのぅセいがナぃとはイぇないシ、目的ノ為にワザと捕マったのカも」

ブタの意見に私も頷いた。

ココよりは警備が厳重とは言え、またあの能力を使ったらどうなるのか分からない……


「でもよぉ、これ以上考えても俺等じゃどうしようもねーよ」

ウサギの言うこともごもっともだ。

「んな事より」

とウサギは話を続ける。

「次の任務って何。え、お前ソロなの? 俺等聞いてないんだけど?」

背の高い二人が私を見下ろしていた。


「私も今日知ったんだよねぇ。でも暗殺じゃないよ。潜入調査。私じゃなきゃダメなんだってさ。私がそう言うの向いてないの知っているけど、どうしてもって」

唇を尖らせる。

「んで? アイツの情報が知りたかったって事はその系統の組織に潜り込むわけか」

黙って頷く。

「うんうん。成る程な。……心配しかねぇな!アイツみたいに捕まったらどうするんだよ」

「おマぇ、ゼっっッったぃへマしてツかまルジゃん!」

被り物が二人。私の顔の前に迫ってくる。


「情報吐いたりしないよ。当たり前でしょ。てか私が捕まる前提なの納得いかないんだけど」

「ぃヤ、だっテおまェだし……」

「そうだな。捕まらないし情報を吐かないのが普通なんだけどな。でもお前の事だから何かしらトチる気しかしないんだよ」

ウサギはため息を吐き、ブタは大きく頷く。

「そこまで言わなくったって良いじゃん……」

「そうは言うけどなぁ」


そんなこんなでダメなところ、私がやらかしそうなことをグチグチ言われ、対策としてアレをされて、ようやく心配性の二人から脱出できた。


…………………………?





…………「アレ」ってなんだっけ?




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