閑話 視点 鬼祷傑



昼休み終了30分前に学園長室にきた彼らの報告を整理する。

番犬と猫の彼らが言うに、「今のところ自分のクラスにそれらしい人物は見当たらないが、面倒なのは多いため警戒を続ける」との話だ。

奏と吸血鬼は「気になる人間が2、3いるがすぐには判断できない」と報告を受けた。

我が考えるに、怪しいのは奏たちのクラスだが、それも判断するにはまだ早い。わかっているのは(女生徒1人と男子生徒2人)それ以外は雇われなのかそうでないのか本当にそれだけなのかも分からない。自分が動けない今慎重に判断するしかないこの状況、楽しむ余裕を持って行動するくらいがちょうど良い。

泊と熾を使って自分で動くくらいが問題も少なく解決できるが、今回のこれは吸血鬼のテストのようなもの。どこにどういう生き物がいて、どう行動したら今後どうなる、そこまで考えて動けなければあやつが困る。やつが困ると奏を任せている我も困る。

あやつらを使わずに我が動くにはことが小さい。かと言って動かない訳にも行かない。偉くなればなるほど悩める問題が増えてかなわん

「主、来客きた」

「主、夢魔が来た」

泊と熾がそれぞれどこからともなく現れて連れてきた来客に目を向けると、視界に入った来客とは番犬どもが特殊科にいる時に同じクラスの女の夢魔だった。襟首のバッヂも星2つでそこそこ強い影響力を持つものだとわかる。

(奏ら以外でここに来るそれなりの奴らは、流華やよしかず、ほかだと受け持ちの教師くらいなものだが。何用か。)他の教室とは少し違う自分の屋敷の部屋と似た作りの学園長室その奥にある庶務机までゆっくり向かい座りながら彼女に本題を急かす

「もう昼休みも終わるが何用か」

「少しばかりお聞き入れしておきたいことが、ありまして。」

「前置きは要らんぞお前は学生。我は学園長だ。ここは学園で、貴族社会のただ中では無い」

ここにいる時くらい気を抜いてもよかろうに。気位の高い奴らときたら、泊と熾がここに入れたくらいだ。余程の理由なのだろう。めんど、気が重たいな。

「ではお言葉に甘えて。…私、偶然、噂で聞き及んだお話がございまして。」

夢魔の特徴なのかゆったりした喋り口調もったいぶった喋り方。特殊科の生徒は授業に取り組む姿勢が低い奴らばかりで困るな。

「お主授業に遅れるぞはよ言わんか」

「では、端的に。普通科にいる本来ならば特進科に行く予定だった人間たちは同じクラスに固まっているようです。そして彼らの目的は、この学園でも貴方でもない。」

「…何を知っておるのか知らんが、その事についてお主に言うことは何も無い。その上主には何も頼んどらんこの意味わかるな」

「えぇ、承知致しておりますよ。差し出がましいのも承知の上です。わかっていてお話に伺いました。」「それでは、御膳を失礼致しますこと、お許しください。」

両肘をついて頭痛を誤魔化すためについた深いため息を吐きながら眉間を抑え先程の夢魔の言葉を反芻する。なぜあの夢魔は詳しい事情を知っていたのか。我は今回の事象は誰にも話しておらん。ましてや外部から誰がどこに潜り込んでいるのかなどもあの夢魔から言われるまで確信はなかった。

彼女が今回の問題に関わっていることは今の話で明確になったが、気分的には一歩進んで3歩下がった。2度目のため息を吐きながら泊と熾を呼び彼女について調べるように言う。

(あやつがどこまで知っているか、何を目的としているかを調べたら、奴らについても少しわかるかもな。)

普通科に潜り込んでいるあやつらに次の報告では学園長室ではなく寮の我の自室で報告を受ける旨、また間者がどこにいるか分からぬ以上気をつけて行動するようにと傑が書き終えた手紙を泊と熾に渡したところで授業開始のチャイムがなった。

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