第1話1-4



チャイムがなり自習という名の自由時間が終わる。するとクラスの人に囲まれる気がした奏は避難しようと席を立ちかけた時隣から声をかけられた。

「さっきは大変だったね?」

体育の時、話しかけられた3人組のうちの1人なのは思い出せたが名前を聞いた覚えがない。

「あ、体育の時の」

「光希だよ」

銀色とも金色ともつかない透明感のある髪色に深い海のような吸い込まれそうな印象的な目元で、体育の時も1番に話しかけて来たのが彼だった

「自己紹介を体育の時してたら翔くんもあんなに囲まれなかったかな」

「自己紹介は関係ないんじゃないかな?」

「実際俺は奏さんのこと知りたくて話しかけてるしさ」

前の席に座ったまま机に肘をつき目を細めて笑いながらそういった彼にどこか引っかかる所を感じた奏は話を早く切り上げたくなり、急に思い出したかのように

「…あ、そうだ、学園長室に翔くんと行かなきゃだったんだ、ごめんね」

窓際後ろの自分とは反対側の黒板前ドア側の翔の席まで移動しようと席を立つと、可哀想というか案の定というか、自分の机から立ち上がった状態で動けなくなってワタワタしている翔を見つけた。近くまで来た所で声をかけようと息を吸った。翔と目が合い、見るからに助かったというようなほっとした表情をした翔が周りの女子たちに声をかける。「今から学園長室行かなきゃだから。」相変わらず身内以外には素っ気ない態度の翔を見ながら、周りの女子にかしましいと面と向かって言わないだけまだ耐えてるのかと、全く関係ないことを考えながら、普通科クラスから脱出に成功した2人は、とりあえず中庭で録と凪と落ち合うために中庭に足を向ける。まだ慣れない廊下を2人でゆっくり進んでいくと目的の人物達がいた、先程感じたのと似たような違和感?既視感?がありしばらく見ていると録と目が合った

「そのように見つめられると照れますね」

ただでさえ目が笑ってなく怖い笑顔なのに冗談か本気か分からないことを言わないで欲しい。

いつの間に移動したのか凪が翔のそばで広げている。会話に飽きた録はお昼ご飯のそばにいる翔の近くに移動し始めた。会話の終わりを感じた奏は先程感じたクラスであった引っかかった事と録に感じた既視感のことを考え始める

「さっき思ったんだけどね、録くんの笑い方最近どこかで見たのよね」

どこで見たは思い出せないがとても既視感のある笑い方がとても苦手で印象に残っていたのに思い出せない

「どこでもよろしいのでは、笑えていようがいまいが、私のやることは変わりませんので。」

翔に接する時以外は素っ気なく会話が長続きしない。録は広げたお弁当を学生には見えない食べ方というか、どこかのいい家柄のような所作で食べ進めていく。

「かにゃたちはにゃにか報告できることあったー?」

口いっぱいにサンドウィッチを頬張ったせいで上手く喋れなくなっている凪が話題をふってきた。気まずかったのだろうか

「んー。特別何かって思い当たらないけど、」

翔の隣に腰を落ち着けて凪の問いかけに返答を返すと、血液パックにスコーンというなんとも言えない組み合わせで食べている翔と目が合う

「想像通り。」

いつも1言どころか5言くらい足りない翔が録に視線を向けながらスコーンのせいで頬がパンパンになったまま録に話しかけた。アイコンタクトで通じ合う彼らが今回も何を感じ取ったのか、はたまた同じことを考えていたのか、それまで夢中で食べていた凪までこちらを注目している中、録が奏に問いかける

「奏さん今日クラスの中で喋った方、どなたですか?」

喋った人と言われても、翔以外これといった人物は思い当たらない

「翔くんとずっと居たからなー」

録が翔を見ながら報告は奏さんに任せたら終わりますよ色々と、などと失礼なことを言っているのを聞き頷いている翔たちのそばで食べ終わって丸くなった凪を見ながら、録が言っていた意味を考えながら奏はお昼ご飯を食べ始めた

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