第1話1-3

翌日朝から普通科に登校することになった4人は玄関先で合流して向かうことにした。

特殊科は人外専用の学科のため、寮も専用の寮があり4人はそこから通っているが、普通科や専門科の生徒が敷地に侵入しないように周りから離れた位置にあるため、通いにくく朝少し早めに出ることになった。いつもならまだ寝ている時間だが、もうそろそろでないと授業に間に合わない。

バタバタと身支度を終え、昼食の簡易食品を手にして朝ごはんの代わりである紙パックの飲むヨーグルトを開けながら、待ち合わせの玄関先まで来たところで凪しかいないことを不思議に思いながら挨拶をして靴を履く。すると自分の前にいた凪が慌てながら奏を引き寄せ左側に避けるすると奏たちが今、立っていた場所に急に人影が現れた。

「え、なに急に」状況の読み込めない奏が凪に問いかけるため顔を上げると横から嗅ぎなれたミルクのような甘い香りと見慣れた薄手のサンドベージュのカーディガンを着た翔に引き寄せられた。

「あっあぶにゃいよ!」

惜しくも制止が間に合わなかった凪は暖かで柔らかな感触が無くなった行き場の無い腕を勢いよく下ろす。奏を前から抱きしめている警戒心の欠けらも無い翔と我関せずのろくをご飯中のリスのように頬を膨らませて仰ぎ見る。

「拗ねている猫を構っていても時間は過ぎ行くので先に向かいますよ翔さ、ん」

昨日いつものごとく敬称呼びを注意され名前呼びをしようとして失敗している禄と、まるで周りの音が聞こえていないマイペースな翔、その腕から抜け出そうともがいていたがビクともしない腕に諦めジト目になりながら早く行こうと促す奏に早くしないとまじで遅刻するからと走り出した凪を追いかけ始めた3人が普通科に遅刻しかけたのは必然であると翔以外の3人が思った。

始業のチャイムギリギリで校舎に入った4人は職員室に向かい担当教師と各クラスに向かう。翔と奏は体育の時の担当と3人でクラスに向かい呼んだら入ってくるよういわれ廊下で待機することになった。しばらくすると軽い紹介が済んだのか入れと声がかかり2人でクラスに入る。

特殊科とは違い30人くらいの生徒が綺麗に整列して並んでいた。「昨日サラッとはしたが、きちんとした自己紹介を手前から」

そう言われ教師のすぐ隣にたっていた奏から自己紹介することになった。

「えっと、特殊学科の方から修学することになった鬼祷奏きとうかなでです。外での授業や課外授業などは私的都合であまり出られませんが、宜しくお願いします。」

昨日の夜改めて集まった時に決めた対外向けのセリフを復唱した奏の言葉の補足を担当教師がしてくれる。

「今私的都合と説明があったように、病気などの本人の都合上、教室のみでの授業に鬼祷は参加してもらうそれ以外の時は保健室にいてもらうようお願いしたが、構って貰いたいがためだけに己も休もうなどと考えんように」

長身スラッと儚げ美女の口から出たとは思えない固い口調で補足を終えた教師は翔に自己紹介を求める。

「あー赤崎翔、奏と同じく外での授業は割と苦手。でも特殊学科のクラス担当からお前は出ろって脅されたから俺は出るよ」

それだけ言うと廊下側の窓に目を向けぼーっとし始めた翔を教師が呆れた目で見ながら同じく補足をする。

「クラス担当が脅したは言い過ぎだと思うが、赤崎は基本外の授業にもも参加するとのことだから、男子は程々に女子は近過ぎないように適切な距離で普通科のことを教えてやってくれ」

「以上特殊科からうちのクラスに来る生徒は2人その上修学でなおかつ特殊学科だ。お前らから教えることは特にないと思うが宜しくしてやってくれ、以上。」

そこまで言うと残りの時間は次の授業の予習をしろと言いおいて教壇の裏側にあるクルクル椅子に座り本を読み始めた。すると案の定というか、関わらず、というか翔と奏にそれぞれ男女が群がり始めた

昨日の体育の時にサラッと説明されたが、ちゃんとした説明はいま初めてしたため無理もないが、翔と奏は、(そのように集まらなくても)と目配せで意思疎通をはかった。

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