第2話

国際的なテロ等、安全を脅かしかねない人為的な脅威からイングランドを守る組織。それが『PREX』だ。ラテン語でを意味し、優秀であれば出生、人種、性別、そして特殊性の有無を問わず、様々な人材がその身を置いている。

そしてもちろん、『PREX』にはsubも一定数勤めていた。


能力値スペックが下がるから、キチンとplayをして欲求満たせっつたよねおい!」

首を締めるのはやめて、メアリーはジェイムズを激しく揺すぶっていた。

ついに周りは、引いているを通り越して無関心を貫き始めた。誰一人、その暴挙を止めようともしない。

「domだろうとsubだろうと、switchですら時にplayしないと死にそうになるってのにオ・マ・エは!一体なんだってのよ‼︎」

「っ……だから」

「チラシも渡したよね、専門のショップの!アレっていかがわしいやつじゃないのよ⁉︎本当に必要最低限のやつ!男女問わずいけるやつなのよ?ねぇ、アレまで無理だって言われたら私は一体どこ勧めればいいってのよ馬鹿ぁぁぁ」

もう半分以上泣き声になってきてるメアリーに、ジェイムズは天を仰いだ。周りの視線が急に痛い。どうにも、悪役は彼になってしまったようだ。

メアリーに突きつけられていたのはsub専用の書類だ。

それも、『play回数』の欄が一カ月分全て空欄になっている束。彼はなんとも言えない気分で苦笑した。

「本当にすまないとは思ってるんだメアリー、でも……」

「……また、いつもみたいに言うんでしょ?」


「「playは勤務とMマスターへの服従。careは給料だ。」」


ジェイムズは何の感慨もなく、メアリーはため息と共にそれを言った。

「貴方って本当に変わっているわ、ジェイムズ。」

「生きやすいと言ってくれ」

本来なら、subはplayとcareをしなくてはならない。さもなくば過労のような症状を引き起こし死に至るのだ。だがジェイムズは……

「____playをしなくても身体に異常はなし、ホルモンバランス、フェロモン状況は常に正常。抑制剤の使用量は一番弱いものを規定量の半分。」

「生きやすいだろ?」

「イカれてるわ」

メアリーはシンプルな罵倒を叩きつけた。

だがまあ、彼女が罵倒したのには明確な理由があった。

ジェイムズがそんな生き方をできているのは、一般的なsubがdomへ信頼を寄せるように、彼が『PREX』と顔も知らないMボスへ絶対の忠誠を維持し続けているからだ。仕事が一生のパートナーと言っているのと同じ。それをイカれてると言わずしてなんと言う。


「だが、俺はそれ以上いらない。」

「はいはい、わかってるわよ。」

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Suit and Blue Rose 夏 雪花 @Natsu_Setsuna

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