第七話:宇宙猫と尋問③
「そ、それで?」
「別に大したこと無いわ。仮にも蓬莱院家の娘を、蓬莱院グループの令嬢を助け出したのだからそれなりの褒賞は貰うべきでしょう? そこら辺の話を通しておきます。あのク――もとい、総裁も否とは言わないでしょうからね」
「褒賞……?」
「ええ。……親の権威を笠に着るようで恥ずかしくはあるけど、それでも企業グループの総裁の娘が拉致された、なんてことを防いだのだからこれぐらいは当然の権利でしょう。私からも言っておくからな何か欲しいものがあったなら――」
そんなことを口にするリオを尻目に、困惑したように弌華と紫苑の眼が交錯した。
そして、
「あっ、別にいいです。そういうの」
「はい。ボクがリオ様をお助けすることに対価は必要ではありません」
「……え。じゃあ、なんであんな危険な目をしてまで私を助けたの? 理由が無いじゃない」
「……えっ、だって美少女の危機だから?」
「リオ様をお助けすることに理由は必要ありません!!」
あっさりと答えた二人にリオは心底以外だと言わんばかりに目を見開いた。
何故か納得していない様子の彼女の姿に弌華と紫苑は続けた。
「そもそも対価云々で言うなら、なんというかこうしてリオ様とお喋りしているだけで十分に元が取れているというか……。弌華だってそうだろ? 彼女作るって息巻いてて寂しい夏休みになるのが確定したんだし、それを考えればリオ様のご尊顔を拝謁しながらの食事なんて――いや、待った。そういえばお前、助け出す時にリオ様を抱いて連れだしたよな? つまり、リオ様の身体に触れ……た?」
「柔らかくていい匂いがしました」
「リオ様! こいつ、明らかに貰い過ぎです。むしろ、こいつが支払うべきですよ! とりあえず、ここの会計は全部ひっ被せましょう!」
「やめろ、俺の財布にダメージが!? それぐらいの役得があってもいいだろう」
「得し過ぎなんじゃい! 許されることじゃないぞ! どんな匂いだった!?」
またもや喧嘩を始める二人にリオは少し呆れたような顔をしながら口を開いた。
「呆れた、本当にいいの? 物が思い浮かばなければ純粋に金銭でもいいのよ? 学生ならそれなりに物入りでしょうに」
「まあ、有って困るものじゃないけどそういうの期待してやったわけじゃないし。それよりも蓬莱院さんにご褒美のデートとかに誘ってもら――「殺スゾ」……怖ぇよ」
トーンの下がった紫苑の声にビビりながらも弌華は辞退した。
お金が欲しくないというほど無欲ではないが、正直庶民の身である弌華としては蓬莱院グループという上流階級の存在と関わり合う方が気後れをしてしまう。
極めて端的に言えば、なんか怖そうで面倒そうなので嫌だ。
そんなこちらのとにかく嫌という気持ちが通じたのか、リオはそれ以上話を続けなかった。
「……貴方たちがそれでいいならいいのだけどね」
二人のことを奇妙な物を見る眼で見ていたが。
「さて、とりあえず食事も済んだことだしそろそろ帰るとするわ。やれやれ、今日は大変な目にあったわ。それもこれも送迎の者がしっかりとしていれば――って、あ」
「どうしました、リオ様?」
いつも通りに呼びつけようとリオは自身の携帯端末を取り出そうとして――気付いた。
確か端末の方は誘拐犯たちに取られたままであったことを。
そして、もう一つ重要なことにも気付いてしまう。
なんか普通に食事をとっていたが、リオはさっきまで誘拐されていたのであった。
当然、蓬莱院家の者はそれを知る由もないはずできっと行方不明扱いになっているはずだ。
何せ、迎えの送迎を頼んだはずなのにリオが一向に現れないのだから。
事態を把握できてるかも怪しいものだ。
「やば、連絡を入れるの忘れてた。下手すると誘拐されたとか何とかで騒ぎになっているかも……」
「まあ、そこら辺は事実だな」
「他人事のような顔をしてるけど、如月くんも関係者だから。警察とかにも連絡が言っているかもしれないし、じゃあ聴取とかもあるかもしれないわね」
「じゃあ、俺はこれで」
「待ちなさい」
面倒そうな流れを感じ、咄嗟に逃げようと席を立とうとした弌華であったがリオの方が早かった。
「今日はもう少し付き合って貰うことになりそうね」
この後、三人は滅茶苦茶聴取された。
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