第23話 エピローグ

 なごやかに談笑しながら僕らはようやく昇降口にたどり着いた。

 幸い教師による施錠はまだのようである。

 僕は靴箱からまだ何とか光沢を保っている革靴を取り出し、それを無言でつっかけると、あしこちゃんも僕に習う。

 昇降口のガラス戸を押し開けると、少しだけ涼しい空気が流れ込んでくる。

 屋内とはいえ完全に戸締りが済んだ校内は空気が淀んで少し蒸し暑かったようで、外の空気が妙に心地よかった。

 深呼吸して、あしこちゃんとてくてくと校門に向かう。

 久しぶりに彼女と下校できる喜びに僕は小さく胸を震わせるなどした。

 最近のあしこちゃんは、時折思い出したようにベルリアルの設定を持ち出して野卑やひな言葉遣いで話しかけてきたりするものの、当初よりも断然に話しやすくなっていた。

 もし彼女が病気であるならばぐんぐんと快方に向かっている状態であると言えるので、このような状態の彼女とならば山を越えるほどの距離を歩いても構わないと思えるほどにテンションが上がってしまう。

 そんな中、あしこちゃんは、

「ジャバヲックは変わってるね」

と僕の横を歩きながら突然脈略もなくそんな事を言ってきた。

「そうですか?」

「それはそういうキャラクターなの?」

「キャラクター?」

「そういう感じのキャラクターなの?ジャバヲックは」

「そういう感じ?」

「何て言うか、そういう感じよ、わからない?」

 なんだか質問返しに次ぐ質問返しで少しうんざりしてきてしまい、とりあえずこちらが素直に回答する事にする。

「僕は僕ですよ。キャラクターとかじゃないです」

 なんだかとてつもなく頭の悪そうな回答だったが、これはかなりの部分で僕の本心だった。

 このような回答が必要なこの世界がおかしいのではないだろうかと思ったりもするのだが、あしこちゃんはこの回答にひどく興味深そうにうなずいてみせたりするものだから、やっぱり世界というのは一筋縄ではいかないものなのだ。

「やはりな」

 彼女はまたもベルリアル化してつぶやいて、にやりとまでしてみせた。

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