第24話 祝祭と蝕の狭間にて覇を競わん
なんでこんな時にベルリアルになるのかな、と未だに彼女のベルリアル化スイッチを探りきれずにいると、そのままあしこちゃんはベルリアル状態でいろいろと先ほどの魔物の一族の設定裏話的な、興味のない話をふってきた。
なるべく熱心に見えるように適当にあいづちを打っていると、あっという間に最寄りの駅までたどり着いてしまった。
関心の持てないテーマのお話などを聞いていると通常は時間の進みが遅いものだが、それを感じさせないとはさすがはあしこちゃんである。
ちなみに、あしこちゃんは電車通学なのでここから5駅ほど電車に乗るのだ。
「ではこのへんで」
と辞去の挨拶をすると、よしこちゃんは今思い出したかのように、
「そう言えばさっきの話なんだけど」
「はい?」
「あれってやっぱりさっき思いついたわけ?」
「何でしたっけ?」
ととぼけてみる。
しかし、今度は通用しなかった。
「さっきの穏健派だか反体制派だかを抱き込むっていう話」
「……プランとしては悪くないですよね?」
あしこちゃんは僕の話を聞いてから、
「同じ話を会長の前でもできる?」
と言った。
答えは「できない」だ。
カーマイル会長にプランを述べたところで、
「穏健派だの反体制側だのは存在しない。魔物一族は一枚岩である」
という一言で消滅してしまう。
「可能性として低い」どころではなく、そもそも「存在しない」レベルでの却下になるのだ。
こんなものは持ち出したところでプランなどとは言えまい。
カーマイル会長がその場にいないからこそ通る道理なのだ。
僕が黙ってしまうと、あしこちゃんはベルリアルではない素の状態でにひっと笑うと、
「では、また、祝祭と蝕の狭間にて覇を競わん!!」
とさよならのあいさつらしきものを述べスカートをふわりとひるがえしながら、改札の向こうへと消えていった。
なんて痛いあいさつなのだろうと思ったが、無論そんな事はどうでもよかった。
初めからすべてを知った上で僕を泳がし、別れ際にスマッシュを決める事によって僕に羞恥を与える作戦であるならば、それは実際成功したと言ってよかった。
かなり恥ずかしかったが、反面、ビンタなどをされなくて済むならそれはそれで助かったな、とも思った。
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