第21話 きっと尋問
興奮の香りを残しながら、ゲームは無事に幕を閉じた。
僕の奇跡的な活躍があったのもカーマイル会長のシナリオの完成度のおかげだと皆がもてはやしたおかげで彼の機嫌も上々となり、僕はほっと胸をなで下ろした。
いつになくスリリングなゲームになったようで、僕も気ままにサイコロを放った甲斐があったというものだ、と笑顔を振りまきながらあいさつもそこそこに一人足早に退室した。
あえて昇降口への最短ルートではなく渡り廊下の方をぶらりと行くと、当然、背後から足音が追いかけてきた。
それほどタイムラグがあったわけでもないのだからそんなに急ぐ必要もないのに、それにわざわざ追いかけてこなくても僕は逃げも隠れもしないのに、と思いながら振り返る。
そこには案の定あしこちゃんがいた。
「結果オーライなんて、思ってないでしょうね!」
あしこちゃんは、恐ろしい事にまだちょっと笑っていた。
複雑な気持ちを抱えていて、それをどう消化すればいいのかわからないのだろう。
それも仕方あるまい。
僕の適当な行動に一番に振り回されたのは、間違いなく彼女なのである。
「もちろん」
と僕は申し訳なさそうな顔をして言った。
「こんな事になるなんて思ってもみなかっ――」
「本当は!!」
彼女は僕の発言が終わる前にもう噛みついてきた。
「何も考えてなかったのね? 何も!!」
うん、そうだよ、などと言った途端、平手の一つでも飛んできそうな勢いである。
しかし、実際問題は彼女の言うとおり、何もどころかちっとも考えていなかった。
彼女と顔を合わせてピースサインを出したりしたが、そんな資格など僕にはなかったのだ。
「本当のところは、まあ、確実性はないけど一つプランを立ててはいたんです」
と間が持たないのででたらめをしゃべり始めるが、合いの手などが一切入らないので話しづらい事この上ない。
ぜいたくは言えない立場だとわかっていながらちょっと悲しくはなった。
「でも、あの人が出てきた時点でそれは使えなくなったんです」
何か思いつかないかしら、と思いながら僕は一寸先が闇の解説を続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます