第20話 運命の果て

 さて、サイコロを持った以上は振らなければならない。

 サイコロを飲み込もうかと考えたが、代わりは山のようにあるのでやめておいた。

 ――しかし、と僕は冷静になって考える。

 三度目はなかろう。

 二度ある事は三度ある、なんてのは敗者の無様な言い訳にすぎない。

 冷徹に確率を眺めれば、そして神がいかに無慈悲を人類に強いてきたかをおもんぱかれば、恐れる事など何も、決して、絶対に、ないのだ!!

 そんな感じに僕は自分を奮い立たせた。

 しかし、もう一人の僕が含み笑いで近寄ってきてこう言った。

「ないと思うから、あるんだよ」

 確率がゼロでない以上、いや、仮にゼロであったとしても起きる時は確かに起きるのだ。

 行くな行くなというから行くのだ。

 来るな来るなというから来るのだ。

 いやよいやよも好きのうちなのだ。

 僕は目の前で0を上にして止まったサイコロを前にそう考えて、深く深く嘆息たんそくしたのであった。

 確かに神は無慈悲だ。

 そして、常に僕らを見て腹を抱えて大笑いしているに違いない。

 できることなら僕も神の隣でポテチの袋に手をつっこみながら同じく笑ってやりたかった。

 でもしかし、現実はかくのとおりだ。

 さすがのカーマイル会長もこれにはまいったとばかりに、

「ジャバヲック、君の果敢なアタックは成功したよ」

とほほを緩ませた。

 彼にそう言っていただけて心からうれしいが、不穏な香りにじませる部屋の一角、すなわちあしこちゃんの心中を想像するとどうにも気持ちが晴れない。

 ――ともあれ、最長老は倒された。

 突然の出来事に呆気にとられる魔物の一族に比べ、歴戦の我が護衛たちは行動が速かった。

 ほんの数太刀で室内の魔物を殲滅せんめつすると、素早く上層部の壊滅を魔物一族中に喧伝けんでんし、敵の戦意を大幅にくじいた。

 あとは、数は多かれど戦闘能力においては数段劣る相手が手もなく死体の山を築く事しかできないワンサイドゲームと化した。

 少しは心が痛んだが、当初からこうなるはずだったのだ。

 そこに僕にできることはなかった。

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