第17話 ゲームマスターの決断

「えっ」

 僕以外の全員が声を合わせた。

 それはそうだ。

 確かに「えっ」だ。

 僕もそちら側にいたら必ずそう言う。

 ジャバヲックに賭けてもいい。

「待て待て待て!」

 カーマイル会長が慌ててストップをかけてくる。

「お前! 最初と言ってる事が違うじゃないか!?」

「気が変わったんです」

「気が変わったって――そんな」

「不可能ですか?」

 問答が長くなりそうなので、僕はとっとと話題を切り替える。

「不可能ならやりませんがどうでしょう?」

「不可能ではないだろう」

 と答えたのはウロボロス先輩だった。

「剣が振り回せないほど狭くもないが一足で届かないほど広くもない」

「待てと言ってるんだ!」

 カーマイル会長が大声を出す。

「どうして今更そんな事を言い出すんだと訊いている!!」

「気が変わったんです。ムシャクシャしてきたんです。不可能ならやりません。どうですか?」

 実はウロボロス先輩が言ったように不可能ではない事は僕にもわかっていた。

 本来ならば慎重に検討されるべき帯刀の件も、ここでは特に問題なくやり過ごされていたし、何より元々が乱戦を想定して話が構成されているのだ。乱戦をはじめると言って何の不都合もないだろう。

 もっとも、それを言い出したのが僕であるというのが一番不都合な点である事は間違いない。

「成功する可能性は低い」

 カーマイル会長はようやく回答を出した。

 さすがは名うてのゲームマスター。

 正直ぶん投げる可能性もありそうだったが、他のメンバーの手前、それは思いとどまったようだ。

 全然思いとどまってくれなくてよかったのに、と僕が考えていると彼はボールみたいな形状のサイコロを取り出した。

 非常に多くの面があるため、通常のサイコロよりもかなり球形に近いのだ。

「これで君の行動の成否の判定を行う。0が出たらまずは抜刀に成功だ。素早い抜刀を行うには君の器用度は低すぎてクリティカル、すなわち0を出す事でのみしか成功できない」

 カーマイル会長の手をはなれサイコロが机の上を転がる。

「サイコロがさらに振ってもう一度0が出たら、敵の制止の前に飛び掛る事に成功だ。これもまた君の敏捷度が低すぎるせいで以下同文。そして、また振って0が出たら攻撃が最長老に当たる。熟練度が低いからクリティカル時のみに成功で、さらにダメージはクリティカル時のものになるので体力値が低い最長老ならば当たれば確実に絶命するだろう」

 カーマイル会長はここまで説明してから、僕の前に転がったサイコロを指差した。

「さあ、ジャバヲック、やるかね?」

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