第15話 到着(してしまった)
そのような僕の悩みとは全く関係なく物語は順調に進んでゆき、ついに一行は目的地である洞穴へ到着してしまった。
「――さて、」
と会長は息をついた。
ここまでプレイ時間は2時間ほど。
いつもどおりであれば魔物との対戦が終わって帰り支度している頃だ。
しかしながら今回は最初のゴタゴタで時間がかかってしまい、話を進め、サイコロを振り、数値を細かくつき合わせるゲームマスターの任を負うカーマイル会長もさすがに疲れの色が隠せない。
「ここからジャバヲックの腕の見せ所、だな」
不敵な笑みを浮かべるカーマイル会長。
彼は協力的ではなく、なし崩し的に乱戦に持ち込む気がありありとうかがえる。
もっとも、会長一個人の感情のみならず魔物の一族としても気分的にはそんなところなのだろう、と僕は思った。
すでに話はこじれ切っているのだ。
そこへのこのこと善人面した若造が「戦争はよくないよ」などと諭しに来るというのだ。
こちらの一挙手一投足に難癖をつけ、できるならば爽やかな笑顔を貼り付けた僕の首を相手に叩き返す事で全面戦争の口火を切りたい――そんな気持ちだろう。
まあ、とても強い護衛がいるのでそんな事態にはならないとわかっていたが、きうと僕の胃は痛んだ。
何が悲しくてこの歳にして胃痛になんか悩まされなければならないのか。
生まれた年か月日か方位か、何が悪かったのだろうか。
いや、どこからどう切ってもこれは自業自得なのだ。
しかし、あしこちゃんが僕の横顔をじっと見つめているわけで、ここで投げ出してしまうわけにはいかないのだ。
話の流れで何とでもなるだろう、というか、なってほしい、というか、ならなかったらどうなっちゃうんだろう、という乱れた心持ちで、憎しみの渦巻くその洞穴に僕は先頭で足を踏み入れたのであった。
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