第12話 丸投げされた無責任な僕

 いや、丸投げされたって何の異議も唱えられない立場だが、実際僕は不覚悟な正義心のみで立ち回っていたため、よい考えなどまったく思い付いていなかった。

 無責任という向きもあろうが、僕の操る彼は僕が無責任なキャラクターと設定してあるのでこれはいたしかたがないだろう。

 いや、正確に言うとそうではない。

 キャラクターには僕自身の性格を付与したのだ。

 僕の無責任さの責任をキャラクターに預けてしまっているわけだ。

 ずるいと思われるかもしれないが、誰だって少なからずやっている事であろうと開き直り、

「何とかします!」

と口走ってみた。

 しかし、完全な無鉄砲と言うわけでもないので安心されたい。

 よくよく考えてみれば、どうなるもこうなるも、カーマイル会長が物語を進めている以上すべて彼の差配次第なのだ。

 彼が首を縦に振れば無用の殺生は避けられることになるだろう。

 つけ入る隙はそこしかあるまい。

 という程度のイージーさで発言したのだが、そのせいで同好会室に想像以上の不穏な空気がはびこってしまったので、僕はじんわりと後悔し出していた。

 が。

「まあ――いいだろう」

 ようやくカーマイル会長が沈黙を解いた。

 ふわと空気が緩む。

「やってみるといい。しかし、これでシナリオは困難な方向へとシフトした。わかるね?」

 どうやら彼は腹を決めたようだ。

 腹を決めたというと重い決断ともとれるが、いずれにせよ交渉は決裂し、きったはったの大乱闘劇になる事に違いはないのだ。

 そこに至るまでのわずかな味付けの違い?

 たまにはこのような趣向も面白かろう。

 そんな軽い思いつきである可能性のほうが高かった。

 そこへウロボロス先輩が少しおどけた口調で、

「新たなルート突入ですな、カーマイル卿。これは一興」

などと言いグフフと声に出して笑う。それに追従して皆も、新ルートの開拓だ、隠しルートの発見だ、などと場を温め直しにかかる。

 カーマイル会長もその声にようやく口元を緩め、

「まったく、君たちとのプレイは気が抜けたものじゃない。ま、それゆえにゲームマスターを買って出ているのだがね――!」

などと肩をすくめて、やれやれなどと言いながらため息をつく。

 話が進んでほっとした僕が、ちらとあしこちゃんを見ると彼女と目が合った。

 彼女は僕に向かって小さくピースサインをしてきた。

 僕は、ピースサインが可憐かれんである事を知った。

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