第11話 交渉からの丸投げ
あしこちゃんの提案は僕もうなずけるほど無難なものだった。
「私たちが外交使節団となってもう一度魔物の一族と交渉を持ってはいかがでしょう」
しかし、カーマイル会長は眉をひそめる。
「それはもう何度も行われた。その経過はすでに長老から聞いていると思うが」
「今回は私たち第三者がいます。状況に変化があるかもしれません」
聡明な意見に僕は聞きほれた。
そうなのだ。
わけのわからない設定さえなければ、あしこちゃんは聡明で心優しい娘なのだ。
先日の頭骨衝突事件も彼女が悪いのではなく、ベルリアルとかいう設定が悪いのだ。
などと考え、僕が一人でほくそ笑んでいる一方、この意見を聞いたカーマイル会長はシナリオが狂っていく事に抵抗するように腕を組んだ。
なるほど、今までのメンバーでならここら辺のやり取りは問題なく過ぎていく部分なのであろう。
そこでの思わぬ茶々に、やや苛立ちの色を隠せずにいるのだ。
カーマイル会長は短気という訳ではないが自分の予定をこよなく愛しすぎるきらいがあり、そこが有能なところである一方で無用のいざこざを起こす原因ともなっているようだった。
入会して間もなくの僕にもすぐ知れたので、おそらく先輩諸氏にとってもすでに了解するところなのであろう。皆それぞれ何となく様子をうかがい、戦意のやりどころに困った顔をしている。
そこにウロボロス先輩が口を挟んできた。
「しかし、どうやって話を持って行く気だ? すでに両一族の感情はもつれにもつれてしまっている。気軽に第三者が交渉のテーブルにのぼるべきではないし、仮にのぼったところで平行線をたどる両者の主張の板ばさみになるだけではないか?」
「それは」
とあしこちゃんは少し口ごもった後、
「ジャバヲックに何か、考えがあるんだと思います」
とこちらに丸投げしてきた。
僕は二度見した。
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