第10話 活動内容

 RPG同好会の主な活動内容はというと、実はこの小芝居が肝要だった。

 すなわち、一人一人が異界の住民を演じながら、会長の考えるお話の起承を聞いて、皆で転結を考える、という一種の即興小話的なものが活動内容の全てなのである。

 ただ単なる小話だけでなく、各々が演じるキャラクターには細かにその身体能力等を現す数値が設定されており、具体的なアクシデントにあえばサイコロを振り運命占い的に数字を突き合わせてそれらを回避するというゲーム的な要素も多分に含まれている。

 放課後に同好会室に集まって皆で異世界に旅立つというのが、この同好会の基本的スタイルであった。

 この前などは、森に住む何とか族の青年になった僕は、山向こうの洞窟に住む魔物と一戦交える羽目になった。

 物騒な話なので詳しくその内容を伺うと、森の一族の狩り場に魔物の一派が現れるようになり、しばし獲物をめぐっての小競り合いを繰り返していたらしい。

 その中、ついに先日、魔物一派の無軌道な若者の集団に森の一族の娘が誘拐され、身代金が要求される事件が発生した。

 身代金と引き換えに娘は無事に解放されたのだが、肝心の魔物一派の上層部はこの件への関与を全面否定したうえ犯人の身柄引き渡しものらりくらりとかわし続けるという有様であった。

 それまでくすぶっていた感情から森の一族は全面抗争の決議を採択し、鉄砲玉として一人の若衆が敵の本部へ殴りこみをかける事となったのだという。

 その若衆とは誰あろう。

 僕演ずるところの青年であるのだ。

 他の皆さんはそれを見かねて手伝ってくれる金で雇われた傭兵という設定らしい。

 話を一通り聞いてから、僕はまず森の一族の上層部に掛け合い、そのような暴力的手段による解決を思いとどまらせるべく説得を試みた。

 至極当然の精神であろうと思うのだが、会長演ずるところの森の一族の長老は困った顔で、

「もう決まった事なんだ」

 としか言ってくれない。

 なんという事であろうか。

 誰に聞いてもすでに魔物一族との戦いは織り込み済みで、彼らの興味はいかに魔物を手際よく効率よく倒すかのみであるというのだ。

 このままでは、悲しみと憎しみの連鎖が途切れる事なく続く歴史の繰り返しになってしまう。

 そう思った僕は、非武装非戦闘を訴え、一過性のヒロイズム、レーショニズムで物事を判断せず粘り強く外交努力を続けていく事こそが平和達成への近道なのだという事をとうとうと述べたがまったく取り付く島がない。

 僕が諦めの気持ちに押しつぶされそうになった時、ついにあしこちゃんが口を開いた。

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