第5話 不敵な笑みもよく似合う

 カーマイル会長の言葉を受けたあしこちゃんは、

「私たちは、試されているのですね」

と不敵な笑みを浮かべながら言い、会長も不穏な笑みでそれを受け止める。

「それは君の考え方次第というものだ」

 よく考えると、この人はさっきからこれしか言っていないような気がしてきた。

「わかりました。ならば、ベルリアルとしての戦い方をするといたしましょう!」

 とあしこちゃんは受諾し、晴れて彼女はベルリアルの名を冠する事となった。

 本人がいたく喜んでいるようなので、僕は複雑な胸中に背を向けて、襲名を祝いパチパチと手を叩いた。

 すると周りの皆さんも同じく手を叩き始め、何やら選挙活動終了直後の野党側候補者事務所のような、不思議な一体感と暖かい雰囲気が生じ出した。

 なんだなんだ、意味不明な事ばかりを口にしても同じ人間じゃないか、いつか人は分かり合えるものなのだ、などと一人感慨かんがいにふけっていると、何やらこの拍手がとあるアニメーションの一シーンと酷似してるとかで一人の先輩女子が騒ぎ出した。

 すると今度は、それに乗った皆さんは何やらその僕の知らないアニメーションの話、と言うか、そのアニメーションのセリフをポーズ付きでお互いにしゃべくり合うという嬌態きょうたいを演じ始めた。

 先ほどまでの一体感はどこへやら、僕はそれらのよく知らないセリフや動きを暗澹あんたんたる気持ちで眺めていたが、もうそろそろ頃合いだろうと誰にも気付かれぬようにそっと部屋を出てとぼとぼと昇降口へと歩みを進める。

 大変なところに迷い込んでしまったと思えたし、あしこちゃんにあれを強要されたらどのように対処すべきであろうか、などとグダグダ考え事をしながらしばし行くと、後ろからたったたったと足音が聞こえてくる。

 誰かが僕を追ってきたようだ。

 ここまでの展開をみればあしこちゃんが僕を追ってきたに違いない、と一気に興奮したが、現れたのは誰あろう、ウロボロス先輩であった。

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