第4話 眷属

 カーマイル会長は実に楽しそうに、

「なるほど! こちらのお嬢さんのほうは少しは素質がありそうだな――」

などと僕に対して失礼な事を当たり前のように言う。

「無謀だ! だが、その無謀さは嫌いではないぞ! ――ハルザラード帝を髣髴ほうふつとさせるではないか!」

とウロボロスが腹を突き出しながら会長に続く。すると、そのハルザラード帝とやらが皆さんのツボにはまったらしく、

「ハルザラード! まさか、再びその名を耳にしようとは!」

「あの無謀と暴虐の皇帝か! 懐かしい!」

などと破顔しながらその名を口にした。

「ハルザラード帝は今いずこにおられるのかな?」

「確か、地元ですよ」

「あーそうだっけ?」

「2こ上ですよね」

などと冷静なやり取りが続く。

 それはそうだ。あの芝居がかったテンションばかりでは追いつくまい。

 しばし談笑が続いて場が緩むと、またもや、バン!!と大きな音がした。

 すっかり忘れられたあしこちゃんが、かわいいこめかみにキュートな青筋などを立てて、きゃしゃな肩をチャーミングにいからせていた。

「あ、ああ、すまなかったな、うん、待たせるつもりはなかったのだ」

と少しうろたえながらカーマイル会長が引きつった笑顔をこぼしたが、あしこちゃんはその表情を崩さない。そこに、

「さっそく契約を始めようか――カーマイル卿」

とウロボロスが助け舟を出してきた。

 なかなかどうして、この二人のコンビネーションは、悪い方向にではあるもののしっかりと機能しているのだ。

「では君は――」

と会長は5秒ほどためてから、

「ベルリアルというのはどうであろうか?」

と言った。

 あまりの美的感覚のなさに僕は愕然がくぜんとした。

 「ベルリアル」などに比べたら「あしこ」のほうが百倍もマシである。当然の抗議があってしかるべきだと思ったが、無論そんな僕の願いは叶えられなかった。

「彼と同じ、力の眷属けんぞく、というわけですか」

とあしこちゃんは僕に冷ややかな目線を送りながら、低い声でつぶやいた。

 どうやら同じカテゴリーのようで嬉しくもあったが、趣味や嗜好などの平穏な一致が望ましかったと言ったら、それはわがままというものなのだろうか?

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