第9話

電話を切った男はまた、お面の下で小さく笑った。冷ややかに、ではなく楽しそうに。その部屋にいた数人は、のっぺらぼうの男が笑ったことに驚く。笑ったとしても、冷ややかな笑みを浮かべたところしか見たことがなかったからだ。見たことがある、というのは少し違かった。男はお面を被っていたからたぶんそうだろうというだけだ。

「ずいぶんとご機嫌ね」

女が言う。

「えぇ。この選択肢を選んだことだけでも嬉しいのですが」

「あいつが、お前のお気に入り?」

今度はまだ幼さを残した子供の声が。

「そうですねぇ。今までで1番のお気に入りかもしれません」

「そう言われると壊したくなっちゃうなぁ」

フフ、とまた小さく笑ってのっぺらぼうのお面を被った男は言う。

「あなたに遊ばれたくらいで壊れるとは思いませんよ。まぁ、壊れてしまったら壊れてしまったで、その程度だった、ということでしょう」

椅子から立ち上がり、くるりと振り返る。

「さぁ、ゲームの時間です。プレイヤーの皆様はご準備を」

その言葉を聞いてはしゃぐ者、ため息をつく者、怯える者。

「今回は、楽しめると思いますよ?」

みな口々に思いを言う。

「期待外れじゃないことを願ってるわ」

「伊月、かぁ。楽しみだなぁ!」

「どうせつまらないに決まってるだろ」

「やだぁ…。やりたくないよ…怖いよ…」

一人、また一人と部屋を出ていく。そして部屋に残った男は呟く。

「さて、どうなるのでしょうかねぇ。1人としてクリアしたことのないこのルートを、クリアする者は現れるのか…」

また、小さく笑いながら。

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