第6話

次の部屋には、たくさんの物が並べられていた。主に武器だけど。さっきまでは白い壁だったが、今度は青い壁だった。

「ここでは1つだけ、物を選べます。この部屋にある物には限りがあるから早い者勝ちでーす」

狐面の男が、部屋の中央でくるりと振り返って説明をする。

「これ、ルールの紙ね。ちゃんと読むこと!」

壁に貼ってあったのをわざわざ剥がし、そばにあった棚で紙飛行機を作って狐面の男が投げた。あれ?なんか俺の方に来るような…。

「伊月、持っといてー」

「はぁ⁉︎何で俺が…」

「いいからいいから」

なんなんだほんと。そうは思いつつも伊月は紙飛行機を開く。凛も覗き込んできた。


1、この部屋に入ったら必ず物を1つ選ぶこと。

2、盗む、などの行為はルール違反とみなす。

3、ほしい物を決めたら部屋にいるプレイヤー以外の者に言うこと。

4、すでに持っている物は選ぶことは出来ない。


4つだけ。ルールは簡潔だった。

「ふぅん、思ったよりもルールが少ないのね」

「みたいだな」

他の人から紙を見せてくれと言われたので、伊月は渡した。ついでに共通のルールの紙も。共通のルールの方は見せたら返してもらったが。

「ねぇ」

凛が話しかけてきた。

「何?」

「あの狐面が言っていた、この部屋にある物には、ってどういう意味かしら?」

「そのまんまじゃないのか?この部屋に並べられている物には限りがあるってこと」

「この部屋、ね」

凛も、伊月と同じことを考えているようだった。凛は伊月に質問した後、何かを考えているようだった。声を掛けられていたが、結構ですと返していた。やっぱり1人がいいのだろうか。もしかして、意外と気があう?物が並んでいる棚の奥にカウンターのようなものがあり、そこに女性が1人立っていた。プレイヤー以外って言っても、狐面の男とフードの男に言うわけがないし。間違いなくあの女性に言うのだろう。1番になってやろうと意気込んでいた人たちが、今度は選択肢をたくさん与えられて迷っている中、伊月はそのカウンターのところまで行く。

「あの」

「何でしょうか?」

にこやかにその女性が返事をした。

「欲しい物、決めたんですけど」

「はい、お聞きしま…あら、もう持っていらっしゃいますね」

「え?」

両手には何も持っていない。伊月は困惑する。

「持っていらっしゃるではありませんか、そのポケットの中に」

あ、と思ってポケットを探った。いや、探る必要もなかった。ほんの少し前に自分で入れたばかりなのだから。

「……」

当然、入っているのは砂時計だけ。つまり女性が言っているのはこれのことだろう。

「では、次の部屋へお進みください」

「え、いやあの…」

左の方へ行くように指示される。通路というほど長くはないが道がある。伊月は手の中にある砂時計を見る。

「これ、なんですか…」

「えぇ」

「変更とか…」

「致しかねます」

伊月の異議は見事に却下される。にこやかな、しかし異議は受け付けないという笑顔を向けられた。話を聞いてほしい。別に選んだわけじゃないのに。

「こちらです」

その女性に案内されて通路に足を踏み入れる。まぁしょうがないか。諦めるしかない。何度もつきそうになるため息を飲み込んで伊月は進んだ。

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