出発

 僕らが生まれた日。小さな彼の背中を追いかけた日。彼に心を奪われた日。彼の世界から僕が消えた日。彼の心が海に沈んだ日。僕が彼を抱きしめた日。

 あの日と同じ太陽が昇る。君だけはどうか僕らの最期を見届けてくれと心の中でお願いして刻音を起こした。

「刻音。朝だよ」

「……ん? あぁ、おはよう」

刻音がむくりと起き上がった。

「よく眠れた?」

「もちろん。太陽の光で目覚めるってすごくいいね」

「あぁ、分かる! 身体中がすっきりする感じ?」

「うんうん、そんな感じ」

 こんな話をしながら、僕らは再び瓦礫の山に登り、クレイ色の街を眺めた。景色は2週間前と変わらない。変わらないことが、高校生二人では何も出来ないことを突き付けているようで悲しくなった。だけど逆に、「お前らにはもう死しか選択肢がないのだ」と誰かに言われている気もして、生きることへの諦めがついた。死を受け入れることができた。

「美暮。行こうか」

「あぁ」

 僕らは海に向かって歩き出した。2週間、何も食べていないし、まともに水分も取っていないから、歩くことで精一杯だったけれど、お互いの手を握り、千風達の待つ場所へ向かった。

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