告白

「好きな人に想いを伝え損ねた」

僕はその言葉に焦りを感じた。刻音にも想い人がいたのだ。

「美暮。千風ちかぜって名前覚えていない?」

「あぁ、覚えているよ」

対して仲の良くなかった僕でさえ、千風のことははっきり覚えている。だって僕はあのときはじめて人の死に触れたから。千風は僕らの同級生で、三年前事故で亡くなった。

「俺、千風が好きだったんだ。でも、あいつは俺の目の前で死んだ」

風のノイズまで彼の言葉に耳を傾けている。

「美暮はなんで千風が死んだか知っているか?」

「事故って聞いたけど?」

「うん。そうなんだけど、実は違うんだ」

「違うって?」

「あいつは自殺した」

予想外の一言に息を呑む。

「俺、あいつと二人で海に行ったんだ。千風に誘われて。何でそんなことを言いだしたのか分からなかったけど俺はもう嬉しくて。いいよと即答した。秋の海はもう冷たくて、入ることなんてできなかったから、俺らは浜辺に座って話をした。話が弾んできたとき、千風が突然こう言ったんだ」

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