生き残りと死に損ない

 幼なじみの彼だった。名前は刻音ときねと言う。僕は焦った。あぁ、どうしてよりによって彼なのだ。神様はいつも余計なことをする。僕は見なかったことにしようかと思ったけど、見殺しにするのはあんまりだと思って話しかけた。

「刻音?」

 彼は、状況が理解できていないようだ。無理もない。全てが終わったのだ。「隕石が衝突した」なんてそう簡単に信じられる訳がない。そもそもなんで自分が生き残ったかさえ不思議な話なのだ。ここが天国ってやつなのかもしれない、なんてことも考える。

 だって僕らは、本当なら今頃、体育館で部活の準備をしているはずだから。

美暮みくれ……」

美暮というのは僕の名前だ。こちらを見つめる真っすぐな瞳に背筋が伸びる。

「美暮……。生きていてくれてありがとう!」

彼は僕に抱き着いた。彼の予想外の動きに追いつけず、身体が倒れる。

 ドスンッという音の後、僕らは地べたに叩きつけられた。彼は僕に抱き着いたまま。次の瞬間、堪えていたものを吐き出すように、刻音は泣き出した。高校生二人には広すぎる地球で、彼だけの声が響いている。

 彼は、終った世界と突然の別れを悔やむように泣いた。それと、生き残りではなく死に損ないの僕に感謝するように。彼は一晩中泣いた。頼りになる圧倒的主人公タイプの彼が、なんだか頼りなく見えて、今、彼のそばに居られるのは僕しかいないと思って。僕は彼を抱きしめて眠った。

 いいのだ。もうこの星には僕らしかいないのだから。

 僕らが終わるまであと十三日。

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