海を呑む猫
谷口みのり
終わりの始まり
醜態を晒す若者、消耗品の創作品、大口を叩く評論家、他人の揚げ足を取ることしかできない大人になれなかった大人たち。本当に世知辛い世の中だ。
でも終わったのだ。そんな世の中も今終わったのだ。
僕は死を恐れている。死にたくはない。だからといって生きている意味も見出せないのだけれど。大切な誰かが先に死ぬのも怖いし、誰かを残して自分が先に死ぬのも怖い。いっそのこと、地球に隕石か何かが衝突して地球人みんなでいっぺんに死ねれば幸せかもしれない。
死んだらどうなるのかは分からない。分からないのだけど、死んだ先に感情を持ち合わせているのなら、今のままは死ねない。きっと後悔する。
なんて考えていた矢先のことだった。僕は死に損なった。
僕の望み通り、この星に隕石が衝突したようだ。そこら辺に瓦礫が散らかっている。街は原型を留めていない。多分こちらの方向に僕の学校があったはずだけど、それが正しいのかさえ疑わしい。この様子だとみんな死んでしまった。家族も、先生も、同じクラスの奴ら諸共。多分もう時期僕も死ぬ。持って二、三週間だ。幸い持っていたカバンに水が二本入っている。今から部活の予定だったから、そこのコンビニで買ったのだ。
飢えて死ぬのは本望じゃないが、せっかく死に損なったのだ。最後の地球人になってやろうと思う。
ガサゴソッ
僕はドキッとした。僕しかいない地球で、物音がするのだ。いつもなら気にならないような音だが、まさかの事態を予想しながら、音のする方へ向かう。
そこには、もう一人生き残りが居た。
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