第2話 トレントの頼み

「で、どうしたの?おじいちゃん。私に何か御用かしら?私でお役に立たてるといいのだけど。」



『すまぬな。人間の娘よ。我とそなたの先祖との盟約をきいてくれるだろうか』



「ええ、いいわよ。ただ、私にできることならね。でもできるだけ協力させてもらうつもりだから。なんでも言ってみて。」



『うむ。それでは。ここ数年、人間どもが山を切り崩し何やら黒い板を敷き詰めておるのだ。

 1ヶ所だけではそういうこともあるだろうと辛抱もする。


 我が娘、ドライアド達もそれぞれの森の守護をしておるが、こういくつも起きるとあやつらではどうにもならぬで我に相談がいくつも上がってきておるのだ。


 その度に森は失われ、その為に水害が置き人間どもの街も鉄砲水に飲まれてしまっておる。自業自得といえばそうなのだが、人を傷つけるとその反動があるし、我も正当な理由なく眷属らが傷つけ蹂躙されたままでは面白うない』



「ああ、きっと太陽光発電所のことね。

 利益のために山林を乱開発してるのね。うちの近所でも鉄砲水ってので死人が出たって、ニュースでやってたわ。


 最近は地球温暖化の為、二酸化炭素削減で再生エネルギーが増えてるのよ。


 でも、そういう話なら、何もしないのが得策じゃないかしら。


 人間は懲りさせないと反省して改善出来ない生き物だから、逆にむしろ鉄砲水を盛大に起こしてやるのが良いのじゃないかしらね?(笑)


 そうすることで国も安全基準を決めて無法化できなくなると思うの。

 もちろん、植林もすると思う。


 だからね。トレント。

 また、無法者が出たなら私に言って!

 精霊たちにお願いして、鉄砲水で散々たる現場にしてやりましょう。


 もちろん、私が死人が出ないように調整するわよ」


 ユミはまっかせなさいというように胸を叩くが、強く叩きすぎたのかゲホゲホと咳き込む。


『はっはっは!それを人間であるお主が言うとはな!少し苛烈すぎやせんかのう。我の方が心配になる程にな』



「うん。私は人間だけど、エルフの血も引いているもの。自然を大切にしないなら、その報いを受けても仕方ないわ。


 人間は少しお金が絡むと目の前が見えなくなってしまうから…」


 ユミは少し悲しげに俯きながら話した。


『あいわかった。それではしばらくはその方向で様子を見よう。具体的な場所などは別途我が娘達をお前の元に使いに出すとしよう。

 では頼んだぞ。』


「うん。またね。おじいちゃん。

 ただ、私この夢の世界からの帰り方が分からないのよ」


『ここは、我々精霊の世界。精霊界。

 我がお主の意識を呼んだのだ。大丈夫。無事に帰れよう。

 ただし、体ごと来る時は気をつけるのじゃぞ。また会おう。ユミ。』


 そう言うとトレントは機嫌良さそうに大きな顔でウインクして見せた。


 ゆさゆさと木の枝が揺れる。


 枝葉の音を聞きながらユミは水の中にでも落ちたように精霊界での意識が薄れていった。

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