人間 その壱

はあ。


神様なあ。


そんなもんよ。いたのかも記憶すら残ってねえなあ。


俺は親父に殴られて生きて来た。

母ちゃんなんて俺が殴られてるのを背に、何も言わず飯作ってたな。


母ちゃんも怖かったんだろうなあ。


俺が中学になって少したった夏によ?

親父が母ちゃん殴ってたんだよ。


俺はもうぶちギレちまってなあ。


でも何か冷静だったんだよ。

近所の大工のおっちゃんに金づち借りてよ?


坊主、何か作んのか?

夏休みの工作だよ?ありがとうね、おっちゃん!


何つってよ?普通に落ち着いてたのを覚えてんなあ。

簡単に殺るなら包丁でいいのによ。


何で金づちか今でもわかんねえ。



気がつきゃ、親父は血塗れ。

まあ、死んじゃいなかったけどな。


母ちゃんは泣いてた。

俺にずっと謝ってたよ。


俺そんときマジで思ったんだよ。


心は泣いてても、体はずっと我慢してんだなってよ。


ありゃ別物だよな。


だから、俺は体を優先に生きた。

その代わり心を殺した。


あの日、13から、俺はヤクザになった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る