接触

学級委員長こと綾見 彩と協力関係を結んだ。そして、件の女と接触する。

俺の隣には綾見がいる、まるで相棒みたいだ。でも、それを伝えるのはやめておこう、きっとキレられるからな。

 女に話しかける。

「なぁ、さっきは大丈夫だったか。」

「うん、大丈夫、でも、怖い、、、」

ひどく、怯えているようだ。声がそれを物語る。

「何でいじめられていたんだ」

この質問は女にとって辛い質問になるかもしれない、だが、これを避けてはこの問題を解決することは難しいと判断した。

「わからない。」

女は一言そう呟いた。

正直困った。いじめるのにもいじめられるのにも必ず何かしらの理由がついて回るものだと思っていたが、今の場合は違うらしい。

「じゃあ私は部活があるから」

女が言い、この場を後にする。

「あ、ちょっと待ちなさい、、、。」

綾見の言葉は届かなかった。


「困ったな」

相棒に話しかける。

「そうね。これはまずいわ。」

相棒が、同意してくれた。正直、少し嬉しい。

だが、状況は何も嬉しくはない。

「これから、どうする?」

相棒に問いかける。

「そうね、、、。近くのカフェでお茶にしましょう。」

カフェ?どゆこと。

「お茶なんかしてる暇あるのか?」

言葉の意味を問いかける。

「情報の共有や伊藤さんと話してみて思ったことを話し合おうと思って。」

なるほどそういうことか。なら必要かもな。あと女は、伊藤というらしい。下の名前は、知らないがな。

「どこのカフェだ?」

「カフェ コロラド、でどうかしら」

それなら、我らの幕張総合高校とは割りと近い位置に立地しているため。移動の面では問題無さそうだ。

「わかった。何時集合にする。」

「30分後でどうかしら」

「問題ない。それじゃまた後で」

「ええ、また。」

相棒とは玄関で別れた。相棒は親の車で帰るのだろう。俺は自転車があるので、それを使うが。


目的地に到着し、店のドアを開ける。相棒が手を振ってくれた。少し嬉しいが恥ずかしさの方が強い、なんで手なんか振っちゃったの、周りから視線感じるだろうが。高校生ぼっちは人の視線に耐性がないんだよ。少しはいたわれ。急に腹が立ってきた俺。こんな小さなことですぐに腹が立つ俺に今度は腹が立ってきた。これぞ怒りループ。今すぐ家に帰って、テレビアニメ、スローループで頭を癒さないと。そのまま釣りに出かけたりしてな。なんてテキトーな思考で焦りを誤魔化しつついたって冷静だという風に振る舞う。

「早かったな、来るの。」

「10分前行動は当たり前よ」

「おぉ、良い心がけだな。」

「そんなことないわ。」

得意気な顔になった。非常にわかりやすい。

掛け合いを終え、俺は、椅子に座る。

「注文は?」

「私はアイスコーヒーを一つ」

「じゃあ、俺も同じので。」

俺は手をあげて、店員を呼ぶ。そして、注文をした。

「では、今ある情報を確認しましょう。」

一通り情報を確認しあった。

「理由がないのに、いじめられるのはどこか様子が変ね。」

もしかしたら、と俺はおもった。

「何かを隠している?」

「その可能性が出てきたわね。」

「では、聞き込み調査を行いましょう。」

「マジか。」

「どうしたの?何か問題でも?」

「俺、人とはなすの苦手なんだが。」

悔しいが事実なのでそのまま伝える。

「我慢しなさい。」

思った通りだった。でも、やはり辛辣である。

「いやーそれはちょっとね。」

睨まれた、めちゃ怖だった。

「はい、すみませんでした。」

気づいたら謝ってた。クソ、こういう時の俺、弱すぎるぜ。

その後、綾見とは、カフェで別れた。俺は一人で帰る。外はすでに、薄暗く、少し寒い。俺は、目の前にある、やや小さめの池を眺める。そこには、散った桜が浮かび、花いかだ、となっている。足元の中礫岩を蹴飛ばす。

それは、鮮やかな、花いかだを壊すように、落下して、二度と浮上することはなかった。粉々になった、いかだを復元するには、時間を要するようだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る