第15話 プレゼント

「どれがいいかなあ……」


 わたしは手に取って、いろんな便箋を見比べる。


 最近というか昔からあるのかは知らないけど、安くて可愛い便箋がたくさんあるので、選ぶのにとても困る。


 あれも可愛いし、これも可愛い。そう思ったら、こっちも可愛い。


 わたしは結構可愛いものが好きなので、こういう時はだいたいの確率で優柔不断な性格が顔を覗かせてくる。


 なんとか最後の二択までは絞れたんだけど……


 あー、ダメだ。本当に選べない。


 緋衣に連絡……って緋衣は今たぶん学校だからスマホ持ってないな。ならお母さんに電話で……ってそもそも電話だと、どっちがいいと思うかなんて聞けないよ……


 ええい、もう仕方ない。どっちも買っちゃおう。ちょっと多いような気もするけど、別にそんなに高いものでもないからいいよね。


 値段によって話は変わってくるけど、昔から二択で迷ったら両方買うことにしている。


(あ、そうだ。そういえば桜來の誕生日ももうすぐだったよね……)


 お姉ちゃんと誕生日が近かったので、よく覚えている。


 確か桜來の誕生日は十月三日。今から数えてあとちょうど一週間後。


 今までは関係が近しくなかったので、わたしが桜來の誕生日をお祝いするのは今年が初めて。


 桜來に誕生日プレゼントと一緒に手紙を書くのはどうかな。


 まだ仲良くなってあんまり時間は経ってないし、ちょっと気恥ずかしいような気もするけど、言葉で伝えるよりもちゃんと日頃の感謝とかが伝えられていいのかも。


(あっ、ということは誕生日プレゼントもそろそろ買わないといけない。よしっ、ついでだし、雑貨屋さんにも行ってみよう)


 わたしは手に持っていた二つの便箋のお会計を済ませて、近くにある雑貨屋さんに向かった。


 ☆


「おー」


 たくさんありますなあ。


 雑貨屋さんは好きだ。いろんな種類のものが置かれてあって、何かを買う目的がなくても、見ているだけで楽しい。


 それに雑貨屋さんの時間の流れがゆっくりに感じるような雰囲気も好きだし、落ち着くような柔らかい匂いも好き。


(あ、このペン立て可愛いなあ。こっちのペンも可愛い)


 おっとおっと、今日はわたしが楽しみに来たんじゃないんだった。桜來の誕生日プレゼントを探さないと。


 桜來が好きなものと言って、一番に思いつくのはペンギン。


 一度一緒にペンギンを見に、水族館に行ったことがあるんだけど、桜來のテンションはいつもの倍以上に膨れ上がっていた。


 だからなにかペンギン関係のものをあげられたらなーと思っていたら、わたしの目に大きなペンギンのぬいぐるみが目に入った。


(えー、めっちゃ可愛いよ、あれ。あれにしようかな)


 ぬいぐるみは好きだ。わたしのベッドにはたくさんぬいぐるみが座ったり、横になったりしている。


 だからなのか、ああいう可愛いものにはつい反射的に反応してしまう。


 桜來はペンギンが好きだから、ぬいぐるみくらいは持っているだろうけど、さすがに同じものではないはず。


 これにしようかなーなんて考えて、値札を見たわたしは一瞬動きがとまった。


(た、高い……)


 値札には「5500円(税込6050円)」と表示されてあった。


 ノーバイト、月お小遣い五千円女子高生にこの値段はだいぶ痛い。針でチクチクさされるような痛みだ。あと消費税が高い。


 ギリギリなんとかなりそうな値段だから、すごく悩む。


 もういっそ一万円とかしたなら、きっぱり諦められたのに。


 ちょ、ちょっと他のも見てから考えようかな~……


 そのあと文房具やリップ、アイシャドウ、小さな時計なんかも見てみたんだけど、なんかこれと言ってしっくりこない。


 結局わたしはつぶらな瞳をしたペンギンのぬいぐるみの前へと引き寄せられていた。


(うん、やっぱりこれだな)


 だって年に一度しかない桜來がこの世に誕生した記念を祝う日だもん。


 キリストの誕生日のクリスマスなんてあんなに大勢から祝われてるんだから、桜來の誕生日もそれと同じくらいの価値がある!


 わたしなんかのたかだか5500円ぽっちなんて軽いものよ!


 でもこれだけは言わせて。


 消費税高い!


 そう心の中で叫んで、わたしはペンギンのぬいぐるみをレジへと持って行った。


(あー、いい買い物した。帰ってお姉ちゃんと桜來に手紙書こう。桜來喜んでくれるといいなあ)


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