第14話 早見くん
「茉莉花ー、帰ろー」
時は放課後。今日も一日よく頑張った。授業中に少し寝てしまったのは許してください。
「ごめん、桜來。今日は用事があって……」
放課後はお姉ちゃんに書く手紙の便箋を買いに行かなくてはいけない。
わざわざ桜來に付き合わせちゃうのも悪いし。
「そうなんだ。残念…… じゃあまた明日だね」
「うん、ごめんね。また明日!」
わたしが桜來に手を振ると、桜來も手を振り返して、教室を去って行った。
みんな帰ったか部活に行ったかで、教室にはほとんど人が残っていない。
「あの、白風さん!」
じゃあわたしもそろそろ行こうかなと思って、カバンに教科書を詰め込んでいるとわたしはある一人の男子に声をかけられた。
「えっと、
この人は同じクラスの早見くん。
確か早見くんは写真部に入っていると聞いたことがある。
清潔感と爽やかさがあるので、わたしの中では好青年なイメージ。
その上落ち着いていて、物腰も柔らかいから、わたしにとってはこのクラスで一番話しやすい男子だ。
他のクラスメイトたちがカッコいいと言っているのを耳にしたこともある。
「ちょっと白風さんに相談があって……」
「相談?」
話しやすいとは言っても、わたしは早見くんと話したことはほとんどない。あるとすれば、課題を集めに回ってきた時とか、授業で同じグループになった時だけ。
そんなわたしに早見くんが相談なんて、一体なんなんだろう……
「その、えっと…… 草刈さんの好きなものって何か知ってる?」
(…………ほほう)
こんな質問をわたしにしてくる理由は一つしかない。
「早見くん、桜來のこと好きなんだ?」
「えっ! い、いや! そんなんじゃ……」
「そんなんじゃ?」
「あ、いや、その、えっと…… そ、そういうのです……」
「やっぱり!」
さすが桜來。まあモテる。息をするようにモテる。
「告白とかしないの?」
「こ、告白なんて俺にはまだ……! 話したことすらほとんどないのに……」
確かに桜來はわたしと同じで男子とほとんど話さない。
いや、わたしなんかと一緒にするなってどっかしらの人から怒られそうかも、ごめんなさい。
わたしはただ男子と話す勇気があんまりないだけなのでした……
まあそんなことは置いといてと。
桜來は告白されるのを少し煩わしく思っているみたいだった。
それを桜來の口から直接は聞いたわけではないけど、少しそういう話をした時の桜來の表情から良く思っていないのはわたしにでも分かった。
でもだからと言って、早見くんの桜來を好きな気持ちは無下にはできない。
「とりあえず桜來の好きなものはペンギンかな。ほら、よく筆箱とかカバンにペンギンのキーホルダーが付いてるの見ない?」
「うん、確かに……」
「あ、そうだ。わたしが手伝ってあげようか?」
「……? どういうこと?」
「早見くん桜來と付き合いたいんだよね?」
「そ、それは……! そうだけど、俺なんかが……」
「なんかじゃないよ。そうやって謙虚になれるのは良い人の証拠だから。付き合えるかどうかは分かんないけど、手伝うだけならわたしにもできるよ」
わたしが手伝うことで桜來と付き合えるかどうかは保証できない。
なんなら今の桜來とは付き合えない可能性の方が大きいと思う。
でも早見くん、すごく良い人だから、手伝ってあげたくなる。
それにいきなり告白するんじゃなくて、ちょっとずつ仲良くなれば、桜來も早見くんのことを好きになるかもしれない。
「何か他にして欲しいことってある?」
「あ、それじゃあ、今の段階でいいから、草刈さんが俺のことどう思ってるか聞いてみたいんだ。あとは自分で頑張ってみるから、それだけお願いしたいです……!」
「うんうん! 分かった! 明日それとなく聞いてみるね!」
「白風さん……! ありがとう!」
(上手くいって欲しいなあ)
「あ、じゃあわたしもう行かないとだから」
「うん、本当にありがとう!」
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