第6話 殴り合い
心臓が止まるかと思った!
突然玄関のドアが開いて、
電話で誰かと話しながら、知らない男の子が入ってきた!
え。かっこいい・・・!
テレビに出てそうな子!
その子が廊下でへたりこんでるあたしを見ると、顔色を変えた。
さらに風翔が投げまくった、
廊下に散乱してる小物を見て、目を丸くした。
緊急事態に気づいてくれた!?
「あれっ?Lじゃん!」
心なしか、彼の顔色が明るくなった。
L!?この子がL!?
めちゃくちゃかっこいいじゃん!!
てか、来るの早すぎません!?
安心から全身から力が抜けて、
余計に立てなくなった。
するとLはスマホをおもむろに玄関に置いて
靴も脱がずにズカズカと入ってきた。
いや、待て待て、靴は脱ごう?
いくら外国人とはいえ?
ん?外国人?
目も髪の毛も黒くて、めっちゃ普通に日本人顔だけど。
Lはあたしを通り過ぎて、そのまま彼のもとへ。
「ともや!!」
怒鳴りながらつかつかと風翔の真正面へ。
Lがいきなり彼を殴って、風翔が吹っ飛んだ!!
「ひっ!?」
声にならない声が出た。
こういうシーン、良くドラマとか漫画であるけれど、
女性が「キャーーーー!」とか叫ぶよね。
出ないよそんな声。
目の前でいきなり殴り合いなんて、
そんな、非日常的なシーン見て
可愛く、きゃー!なんて叫べる!?
「あ、これは殴った」と認識して、
初めて恐怖を感じて叫ぶ。
でもあたしは「殴った」という事実をまだ認識できてない。
だから叫べない、声が出ない!
呆然と、事の成り行きを見守るしかできない!
「お前・・・女に手を上げるなんて・・・」
Lが風翔の上に乗っかる。
え?あれ?あたし彼に殴られてないよ?
床だよ、殴ったの。
言いたいのに声が出ない。
Lはあたしが暴力ふるわれたと思ってる?
風翔は高笑いした。
風翔「まさかこんな弱っちぃストレートすら避けられないとはね・・・この体なまってるなぁ」
L「・・・ともやだろ?」
風翔「俺とケンカで勝てると思ってんの?」
ヤバイ。L、やられる。
体格差は、Lの方が断トツ。
モデルかと思うぐらい背が高い。
風翔ももうすぐ170cmで高いけど、
Lは2mあるんじゃないかってぐらいデカい。
ごめん、盛った。
180cmぐらい。
だけど、風翔はすばしっこい。
一度、小学5年の時のビデオを由美に見させてもらった。
ボクシングのなんかの大会で、優勝してた。
力というより、身が軽くて
相手のパンチが、全然当たらないんだ。
相手がバテてきたところで、ワンパンで倒してた。
あぁ・・・彼のシャドーボクシング、
カッコよかったなぁ・・・。
こんな時なのに、どうでもいい事を考えてる。
腰抜かしたまま二人をボーッと見てると、いきなりLが吹っ飛んだ!
「ひっ!?」
また声が出ない!
これもまた、ドラマとかでは殴る音とかあるからわかるけど
現実ではバキッとかドカッとか、擬音はない!
現実でバキッて音聞こえたら、骨折れてる!
だから何が起きてるのかわからない!
風翔が殴ったの!?
脳が状況を理解するのに
さっきから、何秒かかってるんだろう。
Lが立ち上がろうとするけど、フラフラしてる。
そこへ口の周りに血をつけた風翔が
ニヤニヤ笑いながらユラ~ッと立ち上がった。
やばいかっこいい・・・
じゃないじゃない!
Lが危険・・・!
とにかくそれだけは理解出来た。
殴られたLならわかるけど、
なんで無傷のあたしが立てないの!?
玄関のあたしのバックから、自分のスマホを出す。
そしてハイハイしながら、Lのほうへ近づく。
「危ないので帰って下さい」
Lも痛いはずなのに
風翔の顔を見ながら冷静にあたしに小声で言った。
やばい、かっこいい・・・
じゃないじゃない!
Lが危険・・・!
「ねぇもうやめて!警察呼ぶよ?警察呼んだら困るでしょ!?」
自分のスマホで110と入力した画面を風愛友に見せた
これが精一杯の、あたしの抵抗。
なんて弱々しいんだろう。
風翔は笑ってる。
ねぇ、何が可笑しいの?
なんでさっきから笑ってるの?
アンタLより階級下なんでしょう?
なんで殴れるの?
ていうか、あなた一体誰・・・?
いっぱい聞きたい事がある。
ゆっくりとあたしに歩み寄る風翔。
Lがフラフラしながら、あたしを守るように目の前に立つ。
何この展開!!
一人の女を取り合う男二人!
しかも二人ともイケメン!
冷静に考えると、イケメン二人が目の前で喧嘩とかやばいじゃないですか!?
でもその時は次はどうしよう、次はどうしよう、
それしか考えてなかった。
Lが風翔の両腕を掴んだ。
「ともや、向こうで話そう」
ともや?
って誰?
そういえば風翔のこと、何度も
ともやって呼んでたような?
二重人格・・・?
パズルのピースがはまった気がした。
風翔はLを睨んでる。
お願い、お願いだからあたしの為にケンカしないで。
じゃないじゃない。
お願いだからケンカしないで。
綺麗な顔に傷つけちゃもったいないよ、二人とも。
Lがいきなり、風翔の腕を掴んだまま膝をついた!
何!?
風翔もキョトンとした顔で、Lとあたしを交互に見やる
風翔が殴ったとかではない?
するとLが、ゲホゲホとむせ始めた。
さっきの一発がきたのかな?
あたしは自慢じゃないけど、殴られた事は人生で一度もない。
まぁ、それが普通か。
だけど風愛友がボクシングやってると知ってから、ボクシングについて猛勉強したんだ。
風翔がLに放ったのは確実にストレート。
思いっきりクリーンヒットしてた。
パンチ受けてから、時間差で膝にきて
立てなくなる事があるみたい。
救急車呼ぶ...!?
救急車なら、組織から怒られないよね...??
スマホに目を落として119と入力した時
「L先輩!」
またもや心臓が破れるかと思った。
「L先輩どうしました!?L先輩!!」
泣きそうな顔でLを抱える風翔がいた。
彼だ。
いつもの彼だ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます