word4 「美人の先輩 恋愛履歴書」①
いつからか急速にネットワークが発展して、パソコンやスマホを所有しているのが当たり前になった。
大人なら持っていないと生きていけない、個人用の連絡先が無いと職につけない仕事にならない、休みの日だってあらゆる場面で必要になるスマホ、今では不携帯で外に出るなんてあり得ない。
小学生ですら自分用のパソコンやスマホを所有し、当たり前に使いこなしていたりする――。
そんな現代、日本――。
「今の時代はパソコンやスマホで何でも検索できるよね」
「凄い時代だよな」
皆さんもこんな会話を聞いたことや、自分でしたことがあるのではないだろうか。
オンライン化デジタル化とか言われて、あれにもこれにもURLやバーコード、何でもネットに繋がるし…………各企業はそんな社会に合わせて、自社の製品やサービスがネットで調べると簡単に分かるように努力している。
加えて、多くの個人が毎日ネットに情報を送り込んでいる。有志が作るインターネット百科事典こそが、世界中で最も優秀な百科事典であり、SNSでは各地方の天気や交通情報なんかもリアルタイムで知ることができる。
自己承認欲求を満たす為に専門的な知恵を披露している奴らだってたくさんいる。広告を付けることでそれを商売にしてる奴もいる。
確かに何でも検索すれば出てきそうだ。ありとあらゆる情報が、パソコンやスマホを使えば手に入る気がする。
だが、果たしてそうだろうか――。本当に「何でも」検索できるか――。
答えは否だ。世界中のネットワークをもってしても得られない情報だってある。当たり前だ。機密情報と呼ばれるものは世界にたくさんあるものだ。
国家にしても企業にしても外部の者には秘密の情報を持っている。代表的なのは個人情報だろう、従業員や顧客の年齢や電話番号といった守るべきデータ。他にも政治戦略とか営業戦略とか。
個人のレベルでも絶対に他人にばらしたくない情報がある。これだけは他人に知られたくない、墓場まで持っていくつもりだ――そんな秘密が誰しも1つくらいあるんじゃないだろうか。
さらには、未確認生物――深海の全貌――宇宙の果て――。そして、未来――――。
隠しているのではなく、知りたくても知れない情報だってたくさんあるだろう。
これらの情報はいくら進化したと言っても、パソコンやスマホで検索したところで知れるはずがない――。
でも、なんかよく分からんけど……本当に「何でも」検索できるパソコンが存在する。
俺が手にした黒いパソコン。なんか俺もよく分からんけど、なんか手に入って、性能を確認したらこれこそ本当に「何でも」検索できるパソコンだった。
他人の秘密も余裕で見れたし、未来のことも教えてくれた。
普通のパソコンやスマホと同じように、ワードボックスに知りたいことを入力する。たったそれだけで――。
再び日付が回った午前0時、また俺は黒いパソコンの前に座っていた。
腕を組み、白いワードボックスを食い入るように見つめ、自身の発表がある会議前くらいには緊張していた。
「うーん…………」
もう疑ってないけど、これが何でも検索できるパソコンなら、検索において我慢は必要ないよな……。寝間着姿で喉をごくりと鳴らす……。
だって他人の秘密が分かるなら、俺の秘密もこいつは知っているということだ。俺の欠点や弱点は把握されているし、思考回路や解決したい悩みまでお見通しのはずだ。
つまり、俺が何でも検索できるパソコンを手にしたらどういうことを検索したいかだって知っているんだ。
だったら恥ずかしいとかプライドを理由に、この検索はやめておこうという我慢は無意味だよな。既に俺がどういう男かは見透かされているのだから。
ならば、ありのままを曝け出し、欲望に任せて使っていいよな……。
いいよな…………。
「美人の先輩 恋愛履歴書」
俺はキーボードを叩き、万が一他人にバレたら恥ずかしいワードを入力した。
検索する理由を自分に言い聞かせ……Enterキーのほうへ手を伸ばす。
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