word1 「ピンポンダッシュ 誰」④
「は?何これ?」
思わずそう言ったのはサンダルを脱いで廊下へ1歩踏み出した時だった。
考え事をしていたものだから、そこにあってはならないものがすぐに見えなかったのだ。
洗面所までの道の半分ほど、廊下のど真ん中に、何故か、黒い色をしたノートパソコンが置いてあった――。
親切と言っていいのか分からないが、一目でそれと分かるように液晶画面は開かれていて、キーボードも見えるし、隣には黒い色のマウスも置いてある――。
え、何――どゆこと――。
俺は意味が分からないながらも、黒いパソコンの近くまで歩いた……。近くで見ても間違いなく、黒い色のノートパソコンではある……。問題なのはつい先ほどまで無かったものが突如現れたことだ。
後ろを振り返ってみると、帰ってきたときに置いていた俺のカバンがあった。カレンダーも見慣れたものだし、めくってないから、3ヵ月前のまま。
別にそんなことしなくても部屋を間違えている訳はないのだけど、一応周囲を見渡す……。そうしてみても、俺の部屋でしかなくて、他に怪しいものも見当たらない。
「……何これ何これ?何このパソコン?」
脳で連呼されている言葉をまた声にしてみる。
こんなものさっきまで無かったよな……新手のドッキリか……テレビ番組かなんかの……でもだとしたら、どういうドッキリだよ……いきなり他人の家の廊下にパソコン置いてみたって面白いのか。
「コノパソコン ナニ ケンサクワードハコレデヨロシイデショウカ」
黒いパソコンから、車のカーナビみたいなイントネーションで女性の声がしたので、俺は素早くその場に伏せた。
画面は真っ黒で中央に1つワードボックスがあるだけ。そこに「このパソコン 何」と入力されている。
咄嗟に俺はEnterキーを押した――。押した理由を説明するなら、手癖である。
パソコンの画面がこの形をしているなら押すのはそこしかないから、癖でEnterキーに手が伸びて、謎の物体が何なのか確かめる為にまずはつっついてみた。
すると、画面は切り替わり――。
「このパソコンにはありとあらゆる全ての疑問の答えが入っています。あなたは気になる言葉を入力することでその答えを知ることができるでしょう。しかし、それにはルールがあります。答えを検索することができるのは1日に1度だけです。1日に1度であればどんな質問にも答えることができます。宇宙のことでも、未来のことでも。そう、このパソコンならね。」
さらに、謎は深まった――――。
「いや、何だよこのパソコン……」
俺は体を起こして、一旦距離を取る。再びその場から家の中を見回すと、別の部屋……収納の中……ベッドの下……と、何かあるかもしれない場所を見ていった。
しかし、冷蔵庫の中を見てもゴミ箱の中を見ても……もう1度誰もいない玄関前を見てみてもおかしなところは無かった。
そして、廊下の真ん中にノートパソコンが置いてあるという見たことが無い景色に戻ってくる。
「いや、マジで何だよこのパソコン……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます