意外と時間が無い
やること
チアリーディング部に入部が決まった実桜とモモちゃん。採寸をして練習着と実桜がテレビでやっていた甲子園でのあのかわいい衣装。自分たちも着てアルプススタンドで応援する日が来るかも知れないと思うと胸が高鳴る。
新年度になるにあたって杏華先輩から改めて年間スケジュールをホワイトボードに書いて発表をしていた。
「チアリーディングには主にチアリーディング夏にはジャパンカップと呼ばれる日本選手権、冬にはジュニアオリンピックカップ大会と呼ばれる全日本高等学校選手権大会がある」
これ以外にも夏には野球部の選手権大会で勝ち上がれば甲子園、サッカー部の高校総体、秋には国体、冬にはバスケ部のウィンターカップ、バレー部は春高バレー、サッカー部は予選を勝ち上がれば国立、年明けに野球部が選出された場合はセンバツで甲子園での応援と中々休む時間がない。
そのため、実桜とモモちゃんの加入により今年からたいかいにエントリーが出来ると毎日のように部活を辞めないでと耳がタコになるくらい言われていた。
杏華先輩たちの足を引っ張らないようにと練習をする実桜とモモちゃん。現状では大会にエントリー出来る人数ギリギリと言うこともあって始まりと終わりには柔軟を重視するように、少しでも痛みを感じたらスグに言うように。
練習や大会でケガをしたくなくてもしてしまうことは実桜も肌感覚で感じ、朝学校に来たらクラスメイトにチアリーディング部に入らないかと声をかけるものの中々上手くいかないのが実情。ならば近隣の学校と合同でやったらどうかと杏華先輩に提案をする実桜だった。
重たい雰囲気になって口を開く杏華先輩だった。
「実桜ちゃん、まさにその通りだよ。だけど近隣の学校に電話で確認したり、ホームページで部活動を見たりしているけど中々なくて……。あっても電車で片道数時間かかったり、もし違う学校の生徒同士が演技をしていてケガをした場合、誰の責任になるのかっていう問題もあるの……」
実桜も決して思いつきで発言をしているわけではないが、杏華先輩は話を親身に聞いてくれて肯定をしてくれる、だが、他校とするのはそれだけ難しいことを痛感する。
どうしたらチアリーディング部に入りたいと思うのか、何をすれば魅力的に見えるのか。この部活に入ろうと思うには何が出来るかと根本的なことを考える実桜だった。
言うだけタダ
人数不足もあって先輩たちから希望の新入生と称えられてていた実桜とモモちゃん。もっと人数を増やさなきゃいけないと考えているのは実桜だけではなかった。
部活終わりに実桜とモモちゃんは一緒に帰っている中でとうしたら自分たちのパフォーマンスを多くの人に見てもらえるのか、可憐さや力強さが誰でも見えるような形が出来ればチアリーディングに興味を持ってくれる女の子も増えるかも。モモちゃんにそう提案をしていた。
学校近くの公園に立ち寄ってジュースを飲みながら話す。
「沢山の人に目を触れる機会が増えればいい。そういうことかな?」
実桜は縦に頷くがそう上手い話し、ないよね……。チアリーディングのかわいい衣装を着て踊りたいっていう理由でもいいから来て欲しい。実桜自身がその理由だから。
モモちゃんは頭を悩ませて口を開いた。
「どこまで上手くいくか分からないけど実桜ちゃんも協力してくれる?先輩たちと一緒にパフォーマンスをしてそれを動画をツイッターやインスタグラムに上げるとか。拡散力もあるだろうし、何もしないよりはマシかな」
その話を聞いて実桜の頭の中にはツイッター?インスタグラムと聞いた事のない単語を言われ、戸惑っていた。高校に入ってやっとスマホを買ってラインをインストールしたくらいなのに。聞くと似たような媒体だと説明を受ける。
翌日、練習前にモモちゃんは動画をツイッターやインスタグラムに上げるのはいいのではないかと提案をする。
杏華先輩はそれはイイネと受け入れてくれて話が終わるのかと思ったらさらに加速することになる。
「せっかく動画を上げるならチアリーディングのワザの説明をしながらするとか字幕を入れるとか。後、今いる部員の紹介とかしても面白いかも」
実桜としては軽いノリで提案をしてモモちゃんが動画にしてはとまた杏華先輩に伝えたことがこんなにも盛り上がるとは正直考えてもいなかった。
福山実業高校チアリーディング部専用のアカウントを作って運用をすると杏華先輩から伝えられ、自分たちのパフォーマンスを見返すことも踏まえて動画撮影をすることが決まり、運用は杏華先輩が行う。
最初に部員紹介でそれぞれ自己紹介をしていって誰でも出来るワザを披露する。動画撮影に関してはひと回りするまでは新入生の実桜、モモちゃんの順番で最後に杏華先輩で次からはジャンケンで2日連続になったらあいこで決まるまでするという感じにする。
家に帰って杏華先輩は動画をあげる。当然だが、再生回数も伸びずにいたが数日、数週間、数ヶ月と日を重ねることで再生回数も増えてコメントも増えていった。
毎日のように
本来の目的とは違うものの衣装がかわいいであったり、この衣装を着てパフォーマンスしたいと実際に他校のチアリーディング部からのコメントは励みになるし、嬉しい。
一体何をしたら入部したいと思ってもらえるのか、このまま継続していくべきかそれとも違うことをすべきなのか。それは誰にも分からなかった。
みんな始めて
人数が揃って夏のジャパンカップと呼ばれる日本選手権にエントリーをする。どれだけ練習をしても実際に大会でパフォーマンスをしたことがある人は誰もいない。やるからには勝つ、そのマインドは初心者も強豪校も関係ない。
福山実業高校チアリーディングの門出は散々なものだった。パフォーマンスはバラバラでミスを連発で周りを見渡したらホント素人の集まりだなと痛感をする。
実桜自身、悔しい気持ちはありながらもかわいい衣装を着て大観衆の前で今出来ることを出し切った。出来ていることと出来ないことがはっきり分かっただけでも収穫だなと決してネガティブな気持ちにはならなかった。
先輩たちやモモちゃんは自分たちの不甲斐なさに涙を流している。実桜はチアリーディング部を会場近くの公園に呼んで話をする。
「福山実業高校チアリーディング部の門出はバラバラでミス連発。それは実桜だけでなく、ここにいる全員が分かっている事だと思いますがそれは今回、エントリーをして今出来る自分たちのパフォーマンスをやり切った結果かなと感じているのでまた明日から動画撮影して部員になりたいと思ってもらえるようにしていきましょう」
いつの間にか勝手に仕切っていた。入部して間もない自分が何をしているのだろうと我に帰って杏華先輩に頭を下げた。勝手なマネをしてすみませんと。
杏華先輩が実桜に近づく。怒鳴られる、叩かれると目を閉じていたがギュッと抱きしめてくれた。
「実桜ちゃんの言う通りだね。キャプテンが泣いてて恥ずかしい。本来ならそのセリフを杏華が言わなきゃいけないのにね。でも実桜ちゃんの言葉で目が覚めたよ。ダメで元々、全員切り替えて明日から頑張ろう」
そう言ってこの日は解散し、翌日からまた部員集めと自分たちのパフォーマンスを確認するために動画撮影を再会をする。
やっと効果が出たのか、体育館にはチアリーディングに興味を持ってくれた女の子が数人ではあるが日を追う事に増えていく。
果たしてこの中から何人入ってくれることになるだろうと実桜をはじめ、チアリーディング部員全員が見守っていた。
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