天気に操れない

お出かけ

お互いの過去をさらけ出したが、脳裏に浮かぶのがモモちゃんのお母さんが悲しそうな表情をしていた様子。ケンカしていた訳ではないがあの後、ちゃんと和解出来たのかと自分のことではないのに気になっていた。


学校でモモちゃんに余計なことを言わないように、家にお邪魔している時にその事を言わないように気をつけないと。家族に言われるのと他人に言われるのでは感じ方がかわってくるかなと危惧をしていた。


学校に行けばずっと一緒にいる実桜とモモちゃん。次第に周りからは仲良しコンビだねと所々で聞かれるくらいの関係性に見られていて実桜としてはこれ以上ない嬉しい言葉に心の中でガッツポーズをしていた。


お弁当を忘れたあの日以降は事前に確認をしてこの日はお弁当の日、ホットランチの日をお母さんに伝えるようにして忘れないようにしていた。これでモモちゃんや他のクラスメイトに迷惑をかけることはなくなった。


ホットランチが選択出来れば敢えて実桜とモモちゃん、別のメニューにして取り替えてシェアしたりと食事の時間も楽しんでいる。するとモモちゃんは提案をする。


「実桜ちゃん、今度一緒にどこか行こうよ。歩いて行けるところから自転車で少し遠いところに行くのもいいかも。どこ行くか幾つか候補出そうよ」


そう言われたが、どこに行くか全然思いつかない実桜。スグに出てこないからネットで調べてまた伝えるねと言うのがやっとだった。


家でカナダの有名な観光地を調べると基本的に遠く、トロントに住んでいながらも行ったことのないナイアガラの滝。行きたくても常に観光客が多く、いつでも行けるからとなってしまう。出てきたのは野球場、水族館、動物園、博物館、美術館、大きな公園と出てきた。


晩ご飯を食べている時、モモちゃんとお出かけしたい。検索したところを伝えると「子供たちだけで行くのは危ないからとお父さん、お母さんが付いて行く。それでもいいなら」という話になる。


それを踏まえて翌日、学校でモモちゃんにその事を伝えるとどうやら同じことを言われたみたくしばらくそれでもいいかとお互いに考えていた。そして段階を踏んでいこうということで落ち着いた。後は日時と天気を次第。


どれだけ行きたくても天気が悪くては場所や日時を変える必要があることを頭に置いておかなきゃと雨の日コース、晴れの日コースとプランを立てていた。


雨の日はリプレイ水族館、トロント、ロイヤルオンタリオ博物館、「トロントの台所」と呼ばれるセントローレンス・マーケットに行くようにしよう。晴れの日の場合は動物園やトロントアイランド・パークに行く行くところを決めて次の土曜日、午前9時に約束を交わした。


どっちになるか

金曜日の夜、明日の天気はどうなるのかと友達とどこかお出かけするという経験がなかった実桜にとってウキウキして中々寝付けなかったが早起きしなくてはと思いとりあえず寝れなくても目を閉じようとしていた。


翌朝起きて部屋のカーテンを開ける実桜。晴れでもなく、雨でもなく曇り。その上、雨が降りそうな曇りなら雨用の準備が出来るがそこまでかと言われるとそうではない。何を着よう、雨具は持っていくべきかと頭を悩ませる。


家にある長靴は小さくて履けない、傘は骨組みが折れていて使い物にならないと悲惨な状態で雨を降らないことを祈るしかない。朝ご飯を食べ、お弁当箱を渡されて自分の部屋に戻って何を着ていくか考えていた。


箪笥たんすを開けて悩む。部屋に広げて考えている余裕はない。パッと取ったオレンジのワンピースが目に入って着替える。長髪をツインテールにして頭にカチューシャを付けるという今までしたことのない格好になっていた。


お母さんから催促されるように自分の部屋を出る実桜、リュックサックにお弁当箱を入れて一緒に家を出ようとすると車に乗ったモモちゃんが窓を開けて手を振っていた。


「実桜ちゃんおはよう。ちょっと早いけど迎えに来たよ。お母さんも車に乗ってください。雨が降る前に色々なところを回らないと、時間はあっという間だよ」


そう促されるがまま車に乗った。いつ雨が降るか分からないけど雨が降ったら退散して別のところに移動すればいい、だからピクニックに行こうとトロントアイランド・パークに向かって行く。雨具を持っていないからどうか、雨が降らないでくれと車内で祈っている実桜だった。


現地に着いて歩いていると土曜日ということもあり、多くの親子連れが訪れていてレジャーシートを敷いてサンドウィッチを食べる家族、走り回っている小さい子がいる。


どこかいいところないかなと噴水付近、レジャーシートを敷いている家族がおらず邪魔にならない程度にして噴水を見ながら実桜とモモちゃんは学校のことや今度何をして遊ぶのか、お母さん同士はお互いの家に遊びに行った時の態度や子供との接し方などをそれぞれ話していた。


玉子サンドウィッチや甘い玉子焼き、シェパーズパイ、アップルクランプルなどをお互いのお母さんたちが作ってシェアしていた。アップルクランプルは煮たリンゴとザクザク食感のクッキーでシナモン風味とメープル風味とあってモモちゃんの家ではメープルは代名詞だなと感じた。


ポツポツと上から滴り落ちてくる雨、酷くなる前にレジャーシートを片付けて車に戻って様子を伺うが止む気配はなくて雨の場合の候補地、セントローレンス・マーケットに向かった。


中に入ると幾つもの店舗があって試食が出来てあれもこれもと食べる実桜。がめついから止めなとお母さんに言われるものの耳には入っておらずモモちゃんも続くように試食を食べ回っていた。気がついたら数時間が経っていた。


日没時間になり、もう止んでいるだろうと駐車場に戻るとさらに酷くなっていた。思わず実桜は呟いた。


「思わず雨具、買わないと……。予報が曇りでも油断が出来ないと今日をもって知った。また雨雲買いに行かないと……」


そう呟く声がモモちゃんにも聞こえたのか家まで届けてくれる途中でホームセンターに寄ってくれてクリームソーダみたいなビニール傘と水色の長靴を買ってもらって家まで送ってもらう。


今すぐ必要でないのに寄り道をしてくれたモモちゃんとお母さん、とても優しいなと思いつつ車を降りて見えなくなるまで手を振っていた。


どっちなのか

楽しい週末を終わり、また明日から学校が始まる。いつになったらお日様が顔を出すのか、そう言いたくなるくらい数日間は曇りや雨が降ったりと中々晴れない。寝る前に実桜は水色の長靴たクリームソーダのビニール傘を用意して寝る。


翌朝起きると雨降るのも時間の問題。雨が降っていないのに長靴履くのはどうかなと思っていたが靴で学校に行ったら水浸しになるような予感がしていた。雨が降らなかったらその時はその時だなと朝ご飯を食べて家を出る。


学校に着く頃になると弱い雨が降り、周りを見渡すと傘を持ってきてないのに。水浸しで靴が濡れそうと嘆いている姿を見て長靴とビニール傘を持ってきてよかった。だけど口を大にして言えない。嫌味を言う人に思われる。


かわいいクリームソーダのビニール傘を使える、水色の長靴を履けるのは雨が降っているからこそ。だけどモモちゃんやお友達と外で遊べないと心の中でせめぎあいをする。


学校が終わって傘を持ってきていなかったモモちゃん、途中まで帰り道が同じだからと一緒にクリームソーダのビニール傘に入れて帰ろうとていあんをする。


モモちゃんからは忘れたのが悪い、この傘を買えたのはこの前、途中でホームセンターに寄ってくれたからと押し問答をしていた。単純に実桜が1人で帰りたくない、途中まででもいいからモモちゃんと帰りたいからと折れてくれて一緒に帰る。


曲がり角、モモちゃんからここまで来たらスグそこだからありがとうと言って帰ろうとするがずっとモモちゃんと喋っていたい実桜。迷惑じゃなかったら家まで送ると家には知らない男の子が軒下で立っていた。


すると男の子はモモちゃんと実桜の顔を見ると走って逃げようとすると腕を取ってとりあえず家に入ってと実桜と男の子を家に上げてくれた。


突然家に入ることになって戸惑っている男の子はひとまず自己紹介をする。


「僕の名前は横手万里男よこてまりお、断りもなく、人の家の前で勝手に雨宿りしてゴメン」


詳しく話を聞いていると実桜とモモちゃんの家を点で繋いだ所に住んでいて同い年とのこと。実桜としては友達か増えることは嬉しく、よかったら家に遊びに来てと誘う。


私たちだけのニックネームみたいなの作ろう、突然言い出すモモちゃん。実桜と万里男君は頭を傾げながら思わずどんな感じなのと聞く。


「仲良し同盟、いや仲良しトライアングル」


他に何か思い浮かぶわけでもなく、家も点で繋げるところにあるし、いいかと笑っていた。雨も止み、実桜と万里男は家に帰って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る