驚き

見覚えある

仲良しトライアングルだねと笑顔で交わしたが、それからというものの万里男君の姿を見かけることが減った。久しぶりに会いたいねと実桜とモモちゃんで話していた。


目と鼻の先に住んでいるはずなのにこんなにも会わないものなのかと落胆していた。きっと遠い学校に通っているから見かけないと思っていた。


しばらくすると学校の先生から転校生がやってくると聞いてまた転校生が来るのか、どんな子がなのか。仲良くなれるのかなと実桜が呟いていた。


「いやいや実桜ちゃんも数ヶ月前に転校してきたでしょ。大丈夫、明るくて笑顔がかわいくて人懐っこいから実桜ちゃんなら誰とでも仲良くなれるよ」


もう日本人学校に馴染みすぎて自分が移り変わってきた身だったことを忘れていた。それだけ学校生活が充実していること。


理由を考えるとモモちゃんが初日から声をかけてくれてお昼が食べる時にみんなにご飯やおかずをもらってきてくれたりと色々と助けてくれた。実桜も同じようにしてあげたい、新しく来る子に手助けしたいな。


そして転校生が教室に入ってきて実桜とモモちゃんは目を疑った。お互いの顔をつねって確認をする。あの男の子って……。


「今日からこの学校に転校になることになった横手万里男と言うので仲良くしてもらえると嬉しいな」


万里男君は実桜の隣の席に座って久しぶりだねと笑顔で声をかける。何故万里男君が日本人学校にやってきたのか、言わなくても実桜には何となく分かっていた気がする。


万里男君自身から直接日本人学校に来た理由を自分から言うのならともかく、実桜から言うのは筋違いだし人からどうしてなのかと聞かれるのはイヤな人もいる。万里男君にホットランチの説明や教科書を見せてあげたりしていた。


授業が終わり、モモちゃんが来て改めて自己紹介をする。

咲本・ルーシー・実桜、倉敷桃姫だよ。ぴいちだからモモちゃんって呼んでくれると嬉しいな。私たちも色々な理由があって転校してきたから万里男君の気持ち、少しは分かると思うからなんでも言ってね。


学校が終わってから実桜、モモちゃん、万里男君の3人で学校をひと回りしようとモモちゃんは提案をした。まるで探検みたいで楽しそうとルンルンで歩いていた。


万里男君だけでなく、実桜自身も行ったことのないところもあったためこの階はこういう感じなのかとまるで今日転校してきたかのようにはしゃいでいた。もっと3人の仲が深まるようにするにはどうしたらいいのか。


実桜とモモちゃんは女の子、万里男君は男の子で好きな物や嗜好が違って当たり前。男女関係なく遊べるものはないたろうか、どうすればいいのかなと頭を悩ませていた。


帰り道が同じ3人。実桜とモモちゃんは何かいい方法はないかお考えた。この前に行こうとした動物園や水族館、後は何かないだろうか……。


聞きなれない

実桜は他の国の食べ物や文化にも触れてみたいと感じていた。自分だけでなく、モモちゃんや万里男君を誘って行きたい。だが、カナダトロントにそのような場所があるのだろうか。チャイナタウンやコリアンタウンみたいな場所。


勝手に言っているだけ、思っているだけでそのような場所が出来れば苦労はしない。それなりの需要がないと難しいし、観光客が来たくなるようにならないといけない。小学生であった実桜ですらそう考えていた。


自分の部屋で空気の入れ替えをしようと窓を開けて背伸びをしていると風に乗るように紙が部屋に入ってきた。今までもあって広告のチラシが多くていつもリビングのゴミ箱に捨てていた。今回も同じような感じだろうと紙を見る。


その紙を見て、実桜はコレだと大きな声を出した。英語でジャパニーズタウン、カナダトロント、近々オープンと書かれていた。このジャパニーズタウンにはお寿司屋だけでなく、天ぷら、ファミレス、ボーリング、映画館、カラオケ等から始まるみたい。


ジャパニーズタウンってことは日本食や日本の文化を味わえると言うことなのか。住所を見ると実桜の家からさほど遠くない。自転車でも行けるし、少し遠いが歩いてでも行ける距離にとても嬉しかった。


実桜はその紙を持ってまずはモモちゃんの家に行き、コレすごくない?今度一緒に行こうよと伝えたと思ったら走って今度は万里男君にも教えてあげたいと奔走していた。


最初に営業する店舗は勿論、それ以外にどんな店舗が出来るのかとこれからの展望も踏まえて嬉しくてスキップをしていた。紙には複数書いてあったがこれが全部なのか、いくつかピックアップしただけなのかは行ってみなきゃ分からない。実桜は行きたくてうずうずしていた。


グランドオープンすると地元の人だけでなく、カナダ国内以外にも国外からの観光客も多く訪れるだろうと実桜としては危惧をする。プレオープンがいつなのかのネットやテレビ、ラジオ等をいつも以上に注視していた。


プレオープンやグランドオープンは晴れだと人が多く来るから雨が降ってくれ。そうすれば態々わざわざ雨の日に行かなくてもいいか。晴れの日に行こうとなるのではないかと願っていた。


友達とどこか行くのに雨が降ってくれ、こう考えたのは後にも先にもこの時だけだったと実桜は祈っていた。しはらくしてプレオープンの日が発表され、土曜日のハロウィンの日と決定して実桜の策略は崩れた。ハロウィンであれば晴れでも雨でも関係ないと肩を落としていた。


意外な展開

プレオープン当日、ハロウィンの上に土曜日と部屋のカーテンを開ける実桜は雨を期待していたが曇りだった。お気に入りの水色のトッブスにミニスカートと雨が降るかもとクリームソーダのビニール傘を持って行くことにした。


家を出ると既にモモちゃんと万里男君が待っていてくれた。自転車で行けば早いが雨が降ったらケガをするリスクもあるからと歩く。どんなお店があるのかとジャパニーズタウンに向かうとこの日はホントに土曜日でハロウィンなのかと言うくらい人が少なくて拍子抜けする。


歩いていると高級な日本料理や天ぷらや割烹かっぽう料理、明らかに敷居の高いお寿司屋さんと小学生にはとても手が届かないお店ばかり。これでホントにジャパニーズタウンは発展するのだろうかと小学生ながら考えていた。


しばらく歩いているとカラオケ、ボーリング、ゲームセンター、ファミレスとやっと庶民や子供でも楽しめそうな場所を見つけた。通りが違うだけでこんなにも雰囲気が違うのか。ひとまずぐるりと回ってみて入る所を決めよう。


モモちゃんは万里男君にカラオケ行こうよと提案するが音痴だから他の所がいい。ならばボーリングと今度は実桜が提案するがこれもダメ。映画館に入ってどのような映画を放映されているか確認する。色々なジャンルをやっていたががコレといって何か観たいと思うものが見つからない。


万里男君はボソッとゲームセンター行ったことかないからよかったら行かない?イヤなら実桜ちゃんとモモちゃんの行きたいところに付いていくからさ……。


実桜とモモちゃんは顔を合わせる。

「ゲームセンターってどんなゲームがあるのか知らない。行ったことないし、どんな雰囲気なのか気になるから行こうよ」


賑やかでクレーンゲーム、音楽ゲーム、メダルゲーム、格闘ゲーム、ホッケーゲームとどれで遊ぼうかと目移りしている。実桜とモモちゃんが出来そうなゲームは音楽ゲームかホッケーゲームくらい。


万里男君に「音楽ゲームかホッケーゲームでもいい?」

みんなで楽しめるものじゃないと、ならば両方しようとゲームセンターに入る前とは違ってテンションが上がっていた。


音楽ゲームもホッケーゲームも万里男君には全く歯が立たない。実桜とモモちゃんが協力してやってもダブルスコアで惨敗。みんなが楽しめればいいかと思うようにした。


その後、しばらく歩いていると裏にも出入口があってその近くにはクレーンゲームがある。中を覗くとお菓子がパックしてある物もあれば、キャラクターのグッズや限定のぬいぐるみが置かれていた。


女の子の実桜とモモちゃんはクマのぬいぐるみ、ウサギのぬいぐるみやアニメのぬいぐるみ、ディズニーや日本で流行っているサンリオのキャラクターのぬいぐるみがあってかわいいとテンションが上がるものの大きくて取るの難しそうと肩を落とす。


その姿を見た万里男君はお金を入れた。

「取れるか分からないけど欲しいぬいぐるみ教えて。始めてやるから自信ないけどね」

そう照れくさそうに言いながらぬいぐるみを持ち上げたアームからコロンと落下する。


「実桜ちゃん、狙っていたクマのぬいぐるみじゃないけどどうぞ。次はモモちゃんだね、どれがいい?」


ウサギのぬいぐるみとクマのぬいぐるみの死角になっていて見えなかったがかわいいポメラニアンのぬいぐるみを取ってくれてとても嬉しかった。


万里男君にお礼を言わなきゃと振り向くとまたぬいぐるみを取っていた。モモちゃんにポチャッコのぬいぐるみを取って渡していた。恐るべし才能だなと感心していた。


そろそろ出ようかなと思っているとモモちゃんはプリクラを指を差してみんなで撮ろうよ。勿論万里男君もね。


女の子と写真撮るの恥ずかしいと断っていたが無理やり万里男君を押し込んでお金を入れて写真を撮って加工をする。こんなにも変わるものなのかと驚く実桜とモモちゃん。実桜がハサミで切り取ってモモちゃんと万里男君に配り、これだと顔認証で弾かれそうとだねと笑っていた。


気づいたら夕方になり、それぞれの家に帰って行った。ジャパニーズタウンが私たちの仲を深めてくれた。また行きたいと考えていた。

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