こんな形で
いつかは分かる
実桜が思った通りテストが行われて返却されるとどの教科においても成績が下がっていた。数字が取れなかった実桜にも原因があるがイジメに遭っていたことが明らか。
ある日、家族で出かけていたら偶然にも学校の先生と会うと英語で実桜ちゃん学校でイジメられているって聞いたけど大丈夫?何かあったらいつでも相談に乗るからね。笑顔で手を振って歩いていった。
実桜の心情としては余計なこと言わないで欲しかった。
家に帰ると当然だが何があったのか問い詰められる。話そう、話そうと思っていたがずっと言わず来たために改めて言おうとすると言葉が出てこない。
数時間経っても実桜は口を
数ヶ月も前のことを全て思い出すことは至難の
スピーカーにして翻訳するとなんと約半数以上の先生が把握をしていたが黙認をしていたと答えていた。対策は考えていきたいと返事をするものの具体的にどうするのかと言ったことは答えてはいなかった。
お父さんは怒りの沸点を超えた。翻訳機にこう書いた。
「あなたたちは信用出来ない、この学校にはもう通わせない」
翻訳機が全て言い終えて電話を切った。そして何も心配をすることはないと実桜の頭を撫でた。
実桜自身、学校に通うのはと悩んでいたが現実としてこれから先はどうするのか。ネットで日本人学校のことを調べたことがあって学費もそこそこする。迷惑をかけてしまったという思いしか湧き出てこない。
まだ不安な顔をしていて両親を見つめる実桜。手招きをしてパソコンで日本人学校についての情報を見せた。やっぱりお金のことを伝えると気にすることないと抱きしめてくれて編入テストを受けて晴れてカナダにある日本人学校に通うことが決まった。
今度こそ人間関係で悩まず、学校生活が送れることを望んでいた。ここでダメならまた現地の学校に行き直さなきゃいけないことになる。それだけは避けたいと全員とお友達になって勉強も頑張ると意気込んでいた。
初めて日本人学校に前日、両親から言われたのはお願いだから何かあったらその都度言って欲しい。何かあってからでは遅いし、時間が経てば記憶も薄れてくるからと。
今回の経験を踏まえてその言っている意味が理解出来たしそうならないように実桜自身気をつけようと感じていた。
同じ境遇の子
期待と不安な気持ちで家から通える日本人学校に通うことになった実桜。果たして自分を受け入れてもらえるだろうか、転校してきた実桜とクラスの子は仲良くしてくれるのか思い足取りで両親と共に学校に向かう。
職員室で挨拶を済ませ、両親は家に帰って行った。教科書などを受け取って実桜は案内されたクラスに向かって行く。これまでに感じたことのない緊張感で胸がドクドクしていた。教室に入ってここに来た経緯などを含めて自己紹介をしてみんなと仲良くなりたいと強く伝えた。
隣に座っていた女の子が実桜に話しかけてきて、分からないことがあれば何でも聞いてねと微笑んでくれた。
「えっと……なんて呼べばいいかな?実桜でも実桜ちゃんでも、ルーシーでも呼びやすいように呼んでね」
「ゴメン、自己紹介してなかったね。私の名前は
ショートカットで笑顔がかわいいモモちゃん。この子とは仲良くなれなかったらどうしようという気持ちでいた。距離感のつめ方が実桜には分からなかった。
現地の学校にいたけど日本人学校に転校してのは実桜だけじゃない。それだけでもスゴい心強いな、分からないことがあったらモモちゃんに聞いたりしたいから仲良くなりたいと強く願っていた。
仲良くなりたいなら自分から積極的に声をかけよう、しつこいと思われるくらい話しかけて仲良くなればモモちゃんがどうして日本人学校に来ることになったのか、そして実桜が日本人学校に来ることになった経緯を話そう。そう考えていた。
ずっと現地の学校に通っていたこともあり、日本語は多少話せても書いたり計算することに関しては
お昼の時間、ランチタイムでこの日はホットランチと言って有料の給食みたいな感じで学校内で作って提供されるところと外部のお店に注文をして持ってきてもらうところとあるみたい。ちなみに実桜の通うことになった学校では後者の外部のお店に注文する形式になっていた。
初めて実桜が日本人学校に行く日にランチタイムだとは知らされていなかった実桜と両親、お弁当を持ってきていない上、当然だが注文があるはずもなく空腹の状態で午後からの授業をすることになるのかと落胆していた。
それを見かねたモモちゃんはお弁当のフタを開けてどこかへ向かう。クラスメイトに声をかけているが何をしているのかなとぼんやり見つめる実桜。しばらくして戻ってきて実桜にお弁当のフタを渡す。
「実桜ちゃん、食べるものないと思ってみんなにご飯やおかずを分けてもらってきたから食べて。食べれないものがあったらモモが食べてあげるから遠慮なく言って」
その言葉を聞いて思わず涙が溢れてきた。転校してきたばかり、この日がはじめましてなのにも関わらず優しく接してくれる実桜ちゃん。それに感化されるように自分のご飯やおかずを渡してくれるクラスメイトの優しさに感動してしまう。ひとまず涙を拭ってご飯を食べる。
これ程までに美味しいと感じた食事は過去にないかもしれないと思うとまた涙が出てくる。実桜は全て食べ終わって顔を洗いに行くついでにお弁当のフタを洗おうとする。
「実桜ちゃん、目がウルウルしているけど大丈夫?もしかして余計なことしちゃった?自分は優しさでしているつもりでも相手からしたらお節介だと言われることもあるからさ……」
そう長い髪をかいて照れくさそうにしていた。
人から借りたものを
実桜が関わってきた数年の中でこれ以上にお友達になりたいと思った子がいただろうか、モモちゃんが居なくなったらまた何も出来なくなる泣き虫実桜ちゃんに戻るかも知れない。何となくそんな感じがしていた。
もっと仲良くなるにはどうしたらいいかと考え、一緒に遊べばいいかも。この日本人学校でもお家が近ければお互いの家に行ったり、お外で遊べるかも。そう考えると自分勝手に家が近くないかなと心の声が漏れていた。
モモちゃんから聞いて欲しい、そんな図々しいことは考えておらず実桜から聞こうとしたその瞬間だった。実桜とモモちゃんのめがあって「話がある」と被ってしまう。
お互いに先にどうぞと譲り合いをしていて
さすがに大きい声で言うとクラス中に住所が分かってしまうため、メモ帳に書いて見せ合いっこした。衝撃なことに実桜とモモちゃんの家は壁を挟んで反対側に住んでいた。
聞くと同じ現地の学校に住んでいたものの学校で会うこともなく、壁で地区が分かれていたこともあってか中々交流ということはなかった。
実桜とモモちゃんが思っていたことはある。
お互いに名前が知らないだけで絶対どこかで会っていたよね。これが運命ってやつかな、ずっと友達でいようねと実桜は日本人学校の初日で友達が出来て幸先のいいスタートを切った。
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