ブゥメラン

川谷パルテノン

パンツ

 すっかり暖かくなってきた。半袖でもいいかと思い半袖を着て出かけた。あー、すっかり暖かいなぁ。半袖で正解だなー。


「ちょっと、お嬢さん。Tシャツ」

「へ 」

「裏返しですよ」

 ブーメランパンツの男が立っていた。


 バババン、もしくはモワァアンとここでデカデカのデカなフォントサイズのタイトルが画面いっぱいに浮かび上がるエフェクト。ブゥメラン、と書かれている。



 驚いて、いやいやびっくらこいて尻もちをついてしまった。なんだい、なんなんだい。

「Tシャツ、裏返しですよ」

 きもちわる。Tシャツが裏返しだからじゃない。春の陽気に誘われて現れたブーメランパンツお前のことだよ。豚箱にぶち込んだぁらあ。

「もしもし、警察ですか」

「裏返しですよ」

「だまれ。いや、ちがいますあなたじゃなく」

「Tシャツ」

「黙れてッ。いや、じゃなくてブーメランパンツがあの」

「裏返しです」

「私は今お前のせいで社会的信用をいくらかうしなった」

「裏返しですね」

「社会的には完全に逸脱したキサマよりも今この時点では私のがアウトローということになっている」

「裏T」

「なぜこうなった」

「T裏」

「ちょっとやめろッ。キモイキモイキモイキモイーーーッ。なん。なんでそんな言ってくんの。裏返し。なんで」

「裏返しですよ」

「あっちいけ」

「Tシャツが裏返し」

「あっちいけーーーーッ」


 帰り道にたんぽぽを見つけた。英語名でダンデライオン。ライオンの歯だ。


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ブゥメラン 川谷パルテノン @pefnk

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