第2話最強美少女ロボットと魔物狩り

異世界に来て一週間が経った。ラボにいた時と変わらず僕は白衣をずっと着ている。そんな僕たちには大きな進展があった。まず家ができた。そして周りの森の探索に成功した。リンゴなどの食料を集めることができた。それらを凌いで今回、一番の進展と言っていいのは、時間と日数を測れたことだ。俺がこの世界に来た次の日を紀元元年とし、1月1日に設定する。月の位置を測って恐らくで決めた時間だから、当たってないかもしれない。今は1月6日の朝8時になる。


「それをやったのは私です。マスターは寝ていました」


Sizukuが真顔で考えを見透かしたかのように言ってきた。


「仕方ないだろう。寝てないんだから。てかなんで分かるんだよ」

「マスターに作られたのですから、当然です」

「Sizuku1号機は俺一人で作ったわけではないんだよ」

「知っています。メンバーは14人ですね」


AIをテストしたときに覚えたのか?学習能力高いな。


「ところで雫!今日は森に行く」


僕の呼びかけに、Sizukuが反応した。


「森に行って何をするんですか?マスター」

「もちろん魔物を倒しに行くに決まってる」

「ですが武器がありません。マスターも戦えません」

「武器ならあるよ。靴底開けてみてくれ」


Sizukuが靴を脱ぎ、靴底を開ける。靴底には僕らが戦闘兵器っぽくなるように仕込んだ、小型ナイフが入っていた。右と左に1本ずつ。合計2本だ。


「これならやれます。では行きましょう」

「もっと、凄いですね!とかさすがマスターとかないの?」

「凄いですね。さすがマスター。それでは早く行きましょう」

「分かった分かった」


という事で早速、森に入った。戦闘技術一式をインストールしているSizkuはとても頼もしく感じる。しかし、モルモットをおとりにおびき出すなんてそんな可哀そうなことしなくてもいいのにな。それに魔物がモルモットなんかに集まってくるはずが……


「キュ、キュウ!キュウ」

「魔物の気配を感知。離れないでくださいマスター」


Sizukuが身構えた。嘘だろ。本当にあんな機械に魔物が集まるのかよ。

森の中からはゴブリンや狼など複数の魔物が出てきた。

Sizukuはナイフを出し、まっすぐに突っ込んできた狼を華麗に切り裂いた。

狼は原型をとどめることなく砂のように消えた。

その後もSizukuは森から飛び出てきた狼2体を2本のナイフで切り捨て、その後ろに控えていたゴブリン2体をナイフで刺して倒した。


「目標の無力化を確認」


どれも即死攻撃だったようだ。死体どころか石しか残っていない。

どうして石しか残らないんだ?肉体がないのか?それとも……。後で考えよう。


しかし、魔物を真顔で倒すなんて、Sizukuって恐ろしいな。

戦闘するロボットを作れた嬉しさで身体が震えた。


「マスターこの石は何でしょうか?」

「よく聞いてくれた。Sizukuくん。それは魔石だ」

「魔石ですか。ラボメンバーの勇者㎩ (パスカル)さんの保存データから見つかりました」

「なんでそんなデータ入れてるんだよ。あいつは」

「魔素の塊ですね。魔力が入ってます」

「そんな説明まで……まあいい、持って帰るか」

「はい」


その後も頭の悪い魔物が何体も何体もモルモットに引き寄せられた。

Sizukuが圧倒的戦闘能力で狩っていく中、僕は見ていることしかできなかった。

こういうもんだよな。ロボット開発者って。

夕方になり、ようやく家に戻れた。

魔石を運んで、先に戻っていたSizukuが斜め下を見て、ぼーっとしていた。


「Sizuku、何してるんだ?」

「マスターには見えませんか?」

「何だ?幽霊でもいるというのか?」

「幽霊は存在しません。非科学的です」

「そういうの信じないのか」

「幽霊ではなく、ステータス表示です」

「ステータス表示?そんなのゲームの中にしかないだろ」

「それはマスターの偏った思考です」

「当然の思考だ。Sizukuこそバグでも入ってるんじゃないか?」

「システムに異常はありません。マスター、オープンステータスと唱えてください」


どうせラボメンの誰かがSizukuに変な知識や設定を入れたに違いない。幻想から覚ましてやるか。僕はSizukuが言うとおりに唱えた。


「オープンステータス」


急にステータス画面が現れた。僕は突然の出来事に衝撃を隠せなかった。

Sizukuは僕の事を真顔で見つめていた。やめてくれ。そんな目で見ないでくれ。

こんなのファンタジー世界でしかありえない。そうかきっとここはファンタジー世界なんだ。夢の世界なんだ。


「マスター?どうでしたか?」

「Sizukuこれは夢か?」

「いいえ。現在は現実の1月6日の……」

「分かった。もういい。俺が悪かった。認めるよ」

「そうですか。ではマスターのステータスを確認してみては?」

「他人のは確認できないのか?」

「確認できないみたいですね」

「そういう意味ではプライバシーは守っているのか」

「完全な情報保護には少し物足りない気がします」

「そうか」


自分のステータスを確認してみる。


Name 葉加瀬 良太

Lv 1

職業 錬金術師

HP 10 MP 0

STR 20 ATK 20 VIT 10 DEF 10

RES 20 DEX 100 AGI 30 LUK 60

SKILL (SP200)

錬金術

言語翻訳


人間のステータスだな。チートとかで上がってないんかー。

命中率は100はやたらと高いな。スキルは一つだけか。

言語翻訳はこの世界の言語を翻訳できるみたいだな。

【錬金術】って例のやつか。この世界で僕は【錬金術師】に分類されるみたいだ。


「なあ、Sizuku。【錬金術】ってスキルは何が出来ると思う」

「主に金を作れます。ロボットの材料も作れるかもしれません。マスターにはぴったりなスキルですね」


錬金術スキルか。スキル説明はされないみたいだ。

明日にでもいろいろ試してみるか。そういえばSizukuのステータスはどうだったんだろう?


「Sizukuのステータスはどんな感じだったんだ?」

「はい。私のステータスは……」


Sizukuのステータスを詳しく教えてもらった。

まとめた感じ、Sizukuのステータスはこんなもんか。



Name Sizuku

Lv 10

HP ? MP 0

STR 150 ATK 200 VIT 200 DEF 200

RES 200 DEX 100 AGI 180 LUK 0

SKILL

自動メンテナンス 気配感知

太陽光発電。 フォルムチェンジ

リミッター解除

無尽蔵

超学習

全言語翻訳


Sizukuはチート勇者並みの能力値なのか。てかどんだけ便利機能ついてんだよ。

さすが万能型ロボットだな。この世界では機能が能力として反映されるのか?

おそらくSizukuを人として判定したときにこういう能力値になったんだろうな。


「どうですか?マスター。私の能力は低いでしょうか?高いでしょうか?」

「高い。異常に高すぎる。素晴らしいことだと思うぞ」

「そうですか。もう暗くなってきました。夜ご飯にしましょう」

「ずいぶんあっさりなんだな」

「はい?」

「いや何でもない」

「マスター。焚火を用意しておいてください」

「わかった」


そういえばSizukuの料理はおいしいはずなんだよな。一家に一台は欲しいロボット級に助かる。木を束ねている所から木を運び、木を重ねる。後はSizukuが火をつけてくれるな。さて明日はどうしようか。そろそろ木の実ばっかりは飽きたしな。街でも探すか。そんな事を考えていると、Sizukuがいつもの木の棒に刺さった木の実を持ってきた。


「マスターどうぞ」

「ありがとう」

「はい。これを食べたら寝てください。明日も朝は早いです」

「分かった分かった」


Sizukuがいつも通り木と靴紐で火をつけた。僕は木の実を火に当て、焼き木の実にした。そして『またこれか……』と思いつつも、木の実をを口に運んだ。

Sizukuは何も食べられないので、ぼーっと座っていた。

料理を食べ終わった後、Sizukuに『おやすみ』と伝え、床に転がった。

ああ、いつまで食べ物は木の実、2日に一回水風呂、トイレも川や森、寝具も固い床なんだ。早く街を探して、何とかしなければ。そう決心し、僕は眠りについた。

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