AIの力は偉大なり!!

茶園 ミライ

第1話 最強美少女ロボットと異世界へ

僕はロボットの開発者に憧れた。きっかけはアニメで見たロボット開発者だった。


どんなアニメだったか?そんなの覚えていない。内容なんてどうでもいい。

僕はただロボット開発者に憧れたのだ。


人間は弱い。超能力なんてもちろん使えないし、圧倒的な力の前では跪くことしかできない。しかし、ロボット開発者はそれでも諦めなかった。無敵のロボットを作り、強大な敵を倒す。そして幾度となく陰ながら世の中を救っている。


そんな姿を見た日から、僕はそんな人に猛烈に憧れた。


普通の人ならロボット開発者なんてひと時の夢として終わる。でも僕は無敵のロボットを従える存在になりたかった。その思いはこの世界の誰よりも強い自身があった。


そうして僕は、ロボット開発者を目指した。あらゆる時間をロボット研究、工学、ロボット作成に費やした。父と母も夢に向かう僕に協力してくれた。


それから6年。中学1年生になった僕は才能を開花させ、将来のロボット開発に革新をもたらす者やロボット開発者の金の卵として少し有名になっていた。もちろんロボット開発に革新なんてもたらさない。


その頃、僕は少しずつ夢とずれた方向に進んでいた。中学生になった僕は、周りの影響でラノベ小説や漫画、アニメなどにドはまりしていた。その結果、無敵のロボットを作る目標から、夢のある無敵の美少女ヒューマノイドを作ることを目標にしていた。


ネットの同志たちにそのことを話すと、ロボオタクやAI研究者のオタク、デザイン系のオタクなどその他もろもろの役立つオタクたちが集まった。僕一人じゃ、少し不安だったからかなり助かった。その日から、僕と仲間たち14人での無敵の美少女ロボット作りが始まった。ラボ名はArodeoプロジェクト名はプロジェクトSizuku。プロジェクトはなんかカッコいいからで、Sizukuはこのヒューマノイドの名前だ。


なるべくリアルな人間に近づけるため、皮膚やロボットの関節、筋肉のとなる部分の動きにはこだわった。その他の知識や言語、学習機能についてはAIオタク。外見にはデザイナーのオタク。内臓武器にはサバゲーオタク。ヒューマノイド作成の資金には企業が力を貸してくれた。


そこからさらに5年たった2040年。僕が高校2年生の頃。それは完成した。

開発ラボには僕しか残っていなかった。皆、それぞれの役目を果たしてくれた。

僕はその最終調整が役目だ。これが一番大変なんだよな。

誰もいないラボで一人ヒューマノイドを完成させる。結構いいかも。

少し汚いラボであることを抜いたらだけど。昔は綺麗に整理されていたラボも、今では書類やら器具やらが転がっている。


金髪のヘアピン付きロングヘアに碧眼。身長は内部にいろいろ詰め込む大きさに165cm。オタクの憧れのセーラー服。顔なんて日本のトップアイドルくらいの美貌。なるべく近い素材で作った皮膚も完璧だ。年中白衣で日本の中の上くらいのレベルの僕じゃあ、一生賭けても届かない。さて、あとは動作確認だけか。


「さて、さっそく起動してみるかー」


様々な試行錯誤を重ねて、できた1号機だ。期待に胸を膨らませてしまう。

ベット型の土台を少し上げ、実はon/offスイッチになっているヘアピンを押してみる。Sizukuに電源が入り、死んでいた目が生き生きとした。あまりビジュアルに影響を出したくないため、起動音も最小。起動した合図も目が生き生きするくらいだ。


そんな事を考えている間にロボットがゆっくり起き上がっていた。

まだ少し動作がぎこちないな。初起動だからか?

Sizukuは起き上がり、こちらを向いた。


「こんばんは。マスター。調子はいかがですか」


相変わらずの無表情。言葉にも感情が乗っていない。どう頑張っても人間の心は作れないんだよな。まあ、動作は人間に近いからいいんだが。それに声優さんの協力のおかげで声もバッチリだ。声質を学習し、マネしているだけに過ぎないがな。


「こんばんはSizuku。調子は最高だよ」

「そうですか。心の状態は身体の状態にも影響します。調子が最高という事は良いことです」



Sizukuはベット型の土台から立ち上がり、自分の動作を確認していた。

昔のロボットのようにぎこちない動きはない、比較的に滑らかだな。


「動きはどうだ?Sizuku」

「まあまあですね。マスターよりは動けるかもしれません」

「そうか。じゃあ、少し散歩でもするか」

「私のようなAIを外に出してもいいのですか?」

「少し動きが変なだけだ。他に目立つところはない」


ようやく出来上がったんだから、ラボメンバーに見せなければ。

きっとラボメンバーはいつものオタ喫茶で新作アニメの話でもしているだろう。


「さあ。行こうか」

「はい。マスター葉加瀬」

「開けニューゲート」


僕は高2だから中二病ではない。ただこういう言葉が好きなだけだ。

気を取り直して、ドアを開ける。どうしてだろう。後ろから冷たい視線を感じる。

感情なんて搭載してないはずなのに。きっと、ずっと真顔だからだな。


「マスター?ここは日本ですか?データにこのような地形はありません」


先にドアの外に出ているSizukuがそう言った。Sizukuは何を言っているんだ。日本に決まっているじゃないか。もしかして故障か?なら修理をしないと。

不審に思いながらも、ドアの外に出て行ってみる。


「な、なんだ……ここは」

「マスター?」


信じられない。ドアの外に広がっていた景色に広い街中や車の通る道路はなかった。ただ目の前には広い草原だけが広がっていた。都会の喧騒はなく、人通りや車もない。ただの静寂の広がる草原が。


「……」

「マスター?その反応は日本ではないという事ですか?」

「ああ……」

「そうですか」


神様は時に無慈悲なことをする。世紀の大発明をしたってこんな仕打ちだ。

早く戻らなければ。もしかしたら疲れているだけかもしれない。

最近、開発に集中していたからな。早く戻らなければ……


「マスター」


Sizukuの呼びかけで、動揺で盲目していた意識が覚めた。


「どうした!?」

「扉が消失する可能性があります。徐々に消えてます」


慌てて扉の方向に首を回すと、元の世界への扉が8割消えていた。


「まずい。急いで戻らないと」

「もう間に合いません。私たちが入れる大きさではない」


それでも力の抜けた身体を起こし、元の世界への扉へ向かった。

すると扉の向こう側から小さい何かが突っ込んできた。僕はそれが頭に当たり、地面にこけた。急いで起き上がると、元の世界への扉は完全になくなっていた。


「嘘だ……消えた。もう帰れない……もう会えない。どうすれば。どうすれば」

「心拍数が上がっています。マスター。動揺は視野を狭くします」

「この小さい物さえ頭に当たらなけらば……」


手に取った、それには見覚えがあった。この茶色と白のリアルな毛。そしてこの可愛いハムスターの顔。


「お前はモルモット試作機だな」

「キュウ!キュ、キュウ!」


目の前のモルモットが元気に鳴いた。こいつは僕が試作機で作った、モルモットだ。Sizuku1号機の滑らかな動作を再現する、素になった機械だ。電源が入っていたのか。隣で見ているSizukuがデータを確認している。


「マスター。それはハムスターです。鳴き方はネズミです」

「いいや違う!これはモルモットだ!」

「マスターがそう言うなら」

「そうだろ」


話をしているうちに心のモヤが晴れてきた。自分の行くべき道は……


「心拍が安定したみたいですね」

「ああ。そうだな。閉じてしまっては諦めるしかない」

「ではこれからどうしますか?」

「そんなの現実世界に帰るに決まってるだろ」

「なにか勝算はあるんですか?」

「神に直接会って元の世界に返してもらう」

「合理的な方法とは言えませんが。マスターらしいです」

「ではまずは神様に会う方法を探す。いいな?」

「おー」


ほとんど喋る言葉が棒読みだが、気にしないことにしよう。

さてこれからどうするか。色々、考えることが増えそうだ。

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