16・マトモじゃない野郎共の突撃(ジプス視点)
「!! おい、貴様!! 何だアイツらは!! なぜ、一対一万を超えるような凄まじい比率の戦の戦端を!!
私はジプスという。この木星で、星母マナ様に仕える木星五大陸王の筆頭だ。
この私は、マナ様に地球との戦端を切らせる切っ掛けになった『毒酒』を送り込んできた、地球宇宙軍の第47艦隊の旗艦を先ずはひっ捕らえることと。
新兵連中を実地に戦場に立たせ、『敵を殺すこと』ということがどういう事であるかを体と心で覚えさせるために。
大量の宇宙艦船を率いて来て、それを行おうと思っていたのだが……!
「え! あ、はい! いえ、えい! えいっ! 敵旗艦、止まりません!!」
「オペレーター!! 何をおかしな声を出している!! それより何だアレは!!」
トチ狂ってやがる。私はそう思った。
なぜなら、その敵艦、というか。地球宇宙軍第47艦隊の旗艦!!
そいつが、私が敷いた堂々たる大艦船陣の圧力を全く無視するかのように!!
こちらに向かって、
『いいいいいいいけぇえええええええ!!』
なにやら、少年のようなキンキン声の霊声も霊声スピーカーから響いてくる。
『ひょほおおおおおおおおおおぅっ!!』
何だこの声は? どこぞの蛮族海賊か⁈
『落ち着いてください!! ピウフィオ大尉にケルドム少佐!! 品が、品がありません!!』
む、この声はいいな。好きな声だ……、ではないぞ! 私!!
つい美女を連想させるいい霊声が響いたから。妄想に耽ってしまった。
何をしているのだ私は!!
「がっ!!」
私は。こちらの旗艦、メノストルペ号の艦長席を後ろから蹴っ飛ばして。艦長のフォイオの奴に聞いてみた。
「おう。フォイオ艦長。
私の問いに。木星宇宙軍の大佐であるフォイオは迷惑そうに答えた。
「その、
「む……ぅ。そうだな。王として。仁王として、身勝手な言葉は避けるべきだった。すまぬ、フォイオ」
「なに、謝れるだけの頭があれば。大丈夫ですよ、ジプス様」
「しかし……。地球宇宙軍の艦艇というものは。ここまでのものなのか? 凄まじいな……。唖然とする」
実際。敵旗艦は、ホーミングレーザーというこちらであったら喉から手が出るほど欲しい兵装をガンガン撃って、新兵ばかりのこちらの艦隊を追い散らして道を開けさせ、
「艦長……。メノストルペ号の装甲は、あのクソヤバい敵特殊兵装を喰いとめられるか?」
「さあ? どうなるでしょうか。とりあえず、対物理バリアシールドは張っておきましょう。私も、ありゃ相当に逝っちまってる敵の行動だとは思うんですがね」
私とフォイオ艦長がそんなことを言っていると。
『オラァ――――――――――ッ!! 首とったらぁ――――!!』
来た!! この中年男のだみ声!! コイツがネレイドか!!
『落ち着け、ゼイラム。私たちはまだこの大艦隊の提督を殺すわけにはいかん』
? 後から響く霊声。だみ声の後に、妙に楚々としつつも冷静と大胆を持ったような美女を想像させるような女の声。
『ブッコむんしょ? 俺らが? あの敵旗艦のブリッジまで。ネレイド提督』
『機関部の制動はほぼ完ぺきだ。安心してくれ、提督』
? 何を言っているんだコイツらは? 話していることがこっちに筒抜けだというのに、何を言っているのかわからない。何をするつもりだ?
「ジプス様!! 旗艦左右後方に、二つの極低温核の熱源発生!! サイズは……、ヒューマノイドサイズと、それよりも小さいアニマルタイプ!! ただ、放出エネルギー量が……!! 尋常ではありません!!」
「なんだと⁉ この状況で更に何か出たのか⁉」
「はい!! ヴィジョンモニターに映し出します!!」
オペレーターがそう言って、モニターに二体のアンノウンを映し出す。
「……おとぎ話か? これは!! 何だあの翼の生えた小娘と、翼を持った猫は!!」
そう叫んでいたのは私自身だった。
もう、このシリアスな場面で。
起こりようも無いような、ありえないような存在が。
突然現れたのだから!!
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